池上彰が愕然とした「誘拐経済」の深すぎる闇 誘拐がテロ組織の資金源になっている!
では、こうしたビジネスは、どうして始まったのか。発端は、2001年9月に起きたアメリカ同時多発テロでした。この事件をきっかけに、アメリカはテロ対策のための「愛国者法」を制定。犯罪者集団にとって、マネーロンダリングが困難になりました。これが思わぬ形で新たな犯罪を引き起こすことになるのですから、世の中は皮肉なものです。
こうした犯罪がビジネスとして成立する以上、そこには投資と資金回収のメカニズムも存在します。人の生命をもてあそんで利益を上げる犯罪に投資する仕組みがある。ここにも経済活動があり、経済学の研究対象になります。
世界は連帯して立ち向かうべき
知れば知るほど、恐ろしくなりますが、これが現実世界です。この現実に対し、著者は安易な解決策など提起していません。それほど深刻な事態なのです。
この背景には、東西冷戦以降に進んだグローバル化があります。世界はネットで結ばれ、身代金の要求も受け取りも、はるかに容易になりました。人質ビジネスが盛んになると、国際的な人道支援団体は危険地帯から手を引かざるをえません。紛争地帯の人々は見捨てられることになります。世界から見捨てられた人々の中から、やがて新たな過激派組織・犯罪者集団が生まれてくることでしょう。
そんなことにならないように、世界は連帯して立ち向かわなければなりませんが、アメリカでは「自国第一」を主張するドナルド・トランプ氏が大統領に当選しました。欧州ではイギリスがEU(欧州連合)から離脱します。世界各国で内向きの傾向が進んでいます。しかし、世界が振り向かなくなったら、何が起きるかは明らかです。
そうならないためには、どうすればいいのか。まずは敵のことを知る必要があります。そのために、この本は役立つことでしょう。
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