EU消滅の引き金は「知識人たちの錯覚」である

ブレグジット予言者による「国民国家」復活論

むろんこのような形の政治連合――すなわち帝国――は、私たちが今日受け入れられるものではない。それでも当時、これは機能していたのだ。それに大英帝国の植民地の一部は自治領へと地位を上げた。実質的な自治権を持つ対等な帝国の構成員となった彼らは、歴史によって本国とつながり、法制度や政治制度、言語、君主を共有した。現代の通信技術の恩恵に浴さなくてもだ。

距離が大きな障害となった時代に、英国は史上最大の帝国を築き、管理した。なのにこのインターネットの時代に隣近所で寄り集まって経済・政治連合をつくる必要がどこにあろうか。

言語、文化、共通の歴史、法、仲間意識などが地理に打ち勝つ時代があるとすれば、間違いなく今がそれなのだ。

現代の通信技術は国家連合の可能性を変革した。世界規模の即時コミュニケーションが可能なら、グループの成員を地理的に近い国々だけに限定する必要はない。このことが経済の世界で是認されるのは明らかだ。グローバル化とは要するにそういうことなのだから。米国のどこかを本拠とする企業が、しばしば生産の主要な部分を中国、インド、韓国などで行っていたりする。

政治の世界には、グローバル化はほとんど影響を与えていないようだ。しかし今、政治的な(あるいはそのほかの緊密な)連合が広大な距離をまたいで開花しえない理由はない。

私は距離の重要性を完全に否定するつもりはない。たとえば環境や安全保障の問題に関して言えば、地理的に近い隣国との共通点が最も多くなるだろう。しかし近隣の家々が家計や社交活動を一体化せずとも防犯グループを結成することができるように、欧州の国々も貨幣・財政・政治同盟を結成せずとも安全保障や環境の問題で協力し合えるはずだ。

EUにはおかしな特徴がある。小さすぎると同時に大きすぎるのである。政治的なグループとして成功するには大きすぎるが、さりとて自給自足しうる経済ブロックになるには小さすぎる。経済的な側面から言えば、属する意義があるグループは国連(国際連合)だけだろう。そのメンバーに、すべてのEU加盟国はすでに入っている。

「見たいものだけを見ている」知識人の集団錯覚

統合主義者のプロジェクトがたびたび失敗し、さまざまな危険性を露呈しているにもかかわらず、非常に多くの知識人(目立つのは欧州のエリート層だが、米国の支配層も含む)がこの問題を認めていないのは不思議なことだ(もちろん認めている人々もいるし、EUへの懐疑主義は至る所で増大している)。その理由は、彼らが自分の見たいものだけを見ているということだろう。そして問題点を目にすると、勝手に改善を期待してしまうのだ。

このような集団錯覚の傾向は、知識人の間でかねて顕著だった。

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