衝撃!あの人気雑貨屋が平壌に出店していた 国連安保理決議に違反している疑い

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「31.加盟国が、人道支援の輸送若しくは北朝鮮における外交使節団の活動若しくは国際連合若しくはその専門機関若しくは関連機関の活動又はこの決議の目的に適合するその他の全ての目的のために必要とされると個別の案件に応じて委員会が事前に決定する場合を除き、北朝鮮に所在する代表事務所、子会社又は銀行口座を90日以内に閉鎖するために必要な措置をとることを決定する」

古川氏は「MINISOによる平壌支店開設は、明らかにこの国連安保理決議に基づく制裁措置に違反している」と指摘。「さらに同社の平壌支店開設に伴い、金融支援が日本または中国から北朝鮮に対してなされていた場合には、決議2321号の第32項にも違反することになるため、金融支援の有無についても確認する必要がある」と述べている。国連安保理決議2321号の第32項は以下のとおりだ。

「32.全ての加盟国が、個別の案件に応じて委員会が事前に承認する場合を除き、自国の領域内からの又は自国の管轄権に服する者若しくは団体による、北朝鮮との貿易のための公的な及び民間の金融支援(そのような貿易に関係する自国の国民又は団体に対する輸出信用、保証又は保険の供与を行うことを含む。)を禁止することを決定する」

外為法違反(仲介貿易取引の禁止)の疑い

日本の取締当局はどう見ているのか。経済産業省貿易管理課は19日、筆者の取材に対し、外為法違反(仲介貿易取引の禁止)の疑いがあることを指摘した。

渋谷センター街にあるMINISOの店舗(筆者撮影)

同課は「日本は北朝鮮との輸出入の全面禁止の措置を施している。日本の本社から中国に指示し、北朝鮮に物品の輸出を行っているのであれば、仲介貿易に当たり、これは禁止されている」と回答した。

日本は2004年、北朝鮮への経済制裁に向けて改正外為法を成立させるなど法整備を進め、2006年には貿易の仲介にも経産相の許可を義務付けている。過去には、無許可で北朝鮮から韓国に亜鉛の輸出を仲介したとして、大阪市生野区の貿易会社社長が外為法違反(仲介貿易取引の禁止)の疑いで書類送検されたケースもある。

日本人デザイナーと中国の若手企業家により設立され、アジアを中心に人気を博し、急成長を果たしてきた日用雑貨のMINISO。国連安全保障理事会の対北朝鮮決議に基づく制裁措置が取られるなか、平壌に店舗を開設する違法性にはたして気づいていたのだろうか。同社の対応を待ちたい。また、今後の日本政府当局の動向にも注目が集まりそうだ。

高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

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たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

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