電車内での傘の扱い方については、もう1つ気にしておきたい点がある。吊り革につかまって傘を持つ、あるいは傘を腕にかけるときだ。「地面に垂直に持っている」と、そこだけ確認するのは甘いという。「し」の字になった傘のハンドル部分が、外側になるようにして持つのが正解だという。
「よかれと思って、ハンドルを内側に入れて持つ人がいますが、そうすると傘が外側に倒れやすくなります。ロングシートの座席の前で傘を持っていると座っている人のほうに倒れてしまいます。長傘はこういうリスクがあるので気をつけたいですね」(岩下さん)
ちなみに岩下さんはタオルを持ち歩いて、電車に乗る前にさっと傘の雨水を拭き取るという。また百貨店などの入り口でもらえるビニールの傘を入れる袋を持参して、電車内でもそれを使うこともあるという。
傘を開くときは「つつましやかに」
傘をさすときに気をつけたいのが2点ある。1つは傘を開くとき、「バッ!」と大げさに空につきだして開かないことだ。
「歌舞伎の白浪五人男なのかな」と、思わせるほどに、バサッと大げさに傘を広げる人がたまにいるが、周囲はとても迷惑だ。傘が誰かにあたることもあるし、やはり水しぶきがとんでくることだってある。「開くときは傘先を下にして、また自分の体にできるだけ引き寄せてから、すっと控えめに開くのがいいでしょう」(岩下さん)。
また、傘をさしているとき、同じく傘をさしている人とすれ違い、ぶつかりそうになったりしたときは、相手のいるほうと反対側にかしげて、ぶつからないようにする定番の気遣いも覚えておきたい。かつて「江戸しぐさ」の1つとして紹介された傘かしげだ。もっとも、実際、江戸しぐさでもなんでもなかった、という説もある、いわくつきのマナーでもある。
「江戸しぐさかどうかはともかく、すてきなマナーですよね。うっとうしい雨の季節だからこそこうしたさわやかな所作は、周囲にいい印象をあたえると思います」(岩下さん)
雨水から自分の身を守ることばかり考えず、周囲の人の身や心象まで考える。そんなスマートな“梅雨しぐさ”を実践して、うっとうしい雨の季節を乗り切っていただきたい。
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