「獺祭」を日本一にした"掟破り"PDCAの秘密 四季醸造やクラウド導入には深いワケがある

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しかし、日仕舞いや半仕舞いが当たり前の酒造りでは、仮に仕込みに不具合が生じても、その原因を検証し、すぐに改善することができません。すでに組まれたスケジュールを変えるわけにもいかないので、結果的に週の前半で仕込んだもろみは、ベストではない状態で、次の工程へと流れていくことになります。

私たちの酒の造り方は、大量生産はできませんし、「絵」にはなりません。

しかし、仕込みの結果が出てから次週の酒造りを修正できるので、酒の品質は確実によくなります。結果を検証しながら改善していく。つまり、P(計画)→D(実行)→C(評価)→A(改善)のサイクルをまわす酒造りです。伝統的な酒の造り方に比べて、合理的といえます。PDCAをまわす酒造りは、今の本蔵でも変わらず実践されています。

「四季醸造」は常識から大きく逸脱している?

旭酒造では、1年365日酒を造り続ける「四季醸造」を行っています。これも業界の伝統や常識からは大きく逸脱しているようです。業界の関係者から「四季醸造をするなんて、獺祭はもう終わりましたね」と言われることもありました。「伝統を守って冬の季節にだけ仕込みをするのがおいしい酒」というイメージが強いので仕方ありません。

しかし、はっきり言います。「四季醸造」のほうが、お客様においしい酒を届けられます。1年のうち冬だけ酒造りをしていると、実は酒の品質が安定しません。酒米の出来や気温などの気象条件によって酒の味は変わってきます。冬にしか仕込むチャンスがなければ、それらの条件に合わせた柔軟な酒造りがしづらいため、酒の味が若すぎたり、いきすぎたりといったことが起きます。

「どんな状況下でも品質のよい酒を造るのがプロの杜氏の仕事だ」というのももっともですが、人が造るものですから、必ずしも最高のお酒ができるとはかぎらないのです。もちろん、思いどおりにできなかったとしても、酒を廃棄するわけにはいきません。お客様に飲んでもらうことになります。

一方、四季醸造の場合は365日酒蔵が稼働しているため、品質が安定します。前の仕込みでうまくいかなかった部分があれば、それを反省材料にして次の仕込みに活かすことができるからです。つまり、「日和見生産」ができるのです。

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