後期高齢者医療制度−−医師のサボタージュが続発、神通力失った診療報酬誘導


「早く死ねというのか」終末期相談支援料の顛末

開業医が厚労省に不信を抱く理由はほかにもある。外来診療のいわゆる「5分ルール」の導入は、医師の怒りに油を注いだ。

5分ルールとは、診療報酬の「外来管理加算」(1回52点=520円)を算定する条件を、患者が診察室に入ってから出るまでの間に医師が患者に「おおむね5分を超えて」直接診療に当たっている場合に限定したことを指す。4月の診療報酬改定で盛り込まれたが、「現場を無視したルールだ」(大阪市内の整形外科診療所の院長)などと評判がよくない。

また、同ルールをめぐっては、開業医の団体である全国保険医団体連合会(保団連、住江憲勇会長)が、「厚労省は時間外診療に関する実態調査のデータを不正流用して、診療報酬改定の際に外来管理加算の時間要件を決定した。その結果、算定が2割以上も減少し、小児科や内科などに大きな影響が出ている」と指摘。保団連の指摘を否定する厚労省との間で、対立が続いている。

厚労省は「後期高齢者終末期相談支援料」でもミソをつけた。これは、死が間近な高齢者から、人工呼吸器などの延命治療に関するリビングウィル(希望事項)を聞き取り、書面にサインをさせたうえで、実際に患者が死亡した場合に、200点(=2000円)の報酬を得られるというもの。「高齢者の死を助長するものだ」と医師のみならず野党からも強い批判を浴び、7月1日以降、「凍結」になった。

後期高齢者医療制度に詳しい寺尾正之・保団連事務局次長は、「脳卒中後遺症患者や認知症患者の退院促進を含めて、今回の診療報酬改定はお年寄りにとって極めて厳しい内容になっている」と指摘する。

厚労省は回復期リハビリテーション病棟の入院基本料で、ほかの病院ではなく自宅や有料老人ホームなどへ帰した患者の割合が60%以上である場合には、プラス10点(=100円)をつけた。これは「成果主義」といわれるが、「回復見込みが薄い患者さんの入院が敬遠されるおそれがある」と寺尾氏は指摘する。

厚労省の言う「今までと同じ医療」を、お年寄りはいつまで受けることができるのか--。診療報酬改定への医師の反発を「単なるエゴ」と切って捨てることはできないだろう。
(週刊東洋経済編集部 撮影:谷川真紀子)

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