コミー前FBI長官、トランプ大統領に痛打 「弾劾」にはまだ早いが、政策運営に足かせ
もし録音が提出されれば、ニクソン大統領のウォーターゲート事件に匹敵するスキャンダルになるだけでなく、コミー前長官の一連の発言が真実であることが証明されることになる。ちなみにウォーターゲート事件では、録音テープにニクソン大統領の品のない生々しい発言が残されていたため、単に法的な問題だけでなく、その発言によってニクソン大統領は辞任に追い込まれた。失言、暴言が多いトランプ大統領の内輪の発言が公になれば、同様な問題が表面化する可能性もある。
トランプ大統領は「コミー前長官は嘘つきである」と、コミー氏の指摘をすべて否定している。だが、今回のスキャンダルがトランプ大統領に大きな打撃を与えることは間違いない。まず、大統領がフリン前補佐官の捜査の中止をコミー長官に求めたのは、司法妨害(捜査妨害)に該当するのではないかという問題がある。
執拗な捜査中止要請は司法妨害に相当するか
トランプ大統領は、ロシア関係の捜査によって自分の外交が大きく阻害されていると述べ、その"雲"を取り払う必要があるとコミー前長官に何度も迫っている。コミー前長官はトランプ大統領の再三の要求を、FBIの独立性を理由に拒否する。それが解任の要因になったことはもはや疑いえない。
トランプ大統領は、「捜査の中止を求めて何が悪い。それも大統領権限だ」と語り、司法妨害は適用されないとしている。しかし、最終的にトランプ大統領の行為が司法妨害に相当すると判断されれば、それは大統領弾劾の根拠になりえる。かつてニクソン大統領は弾劾にかけられそうになり、クリントン大統領は弾劾裁判にかけられたが、いずれもその理由は「司法妨害」と「偽証罪」であった。今回、そうした判断の根拠となるのは、コミー前長官の証言である。
コミー前長官の公聴会が開かれた上院のハート・ビル216号室の前には午前4時から40メートルもの長蛇の傍聴者の行列ができていた。公聴会が始まった10時には部屋は人いきれで蒸しかえっていたという。身長が2メートルを超えるコミー前長官がドアから入ってくると、カメラマンが殺到し、部屋は興奮に包まれた。公聴会の共和党委員はトランプ大統領を擁護しようと待ち構え、民主党委員はトランプ大統領を糾弾しようと身構え、緊張した雰囲気で始まった。ただ両党ともにコミー前長官を非難する議員はいなかった。
公聴会の焦点は、ロシアの大統領選挙への介入の有無である。バー委員長は「ロシアがトランプ候補の選挙運動の担当者と接触を試みたのは共謀に匹敵するレベルであったのか」と問いかけた。コミー前長官は、トランプ大統領のロシアとの関係について、「FBIはトランプ氏の行動を詳細に調べていた」と初めて、捜査を行っていたことを認めたうえ、「トランプ大統領の行動はFBIの捜査対象に入るが、トランプ大統領自身が具体的にFBIによって捜査されたことはない」と答えた。
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