コミー前FBI長官、トランプ大統領に痛打

「弾劾」にはまだ早いが、政策運営に足かせ

相手を訴訟で追い詰めるというのはトランプ大統領の常套手段である。トランプ大統領は不動産会社の経営においても、ビジネス上のトラブルが発生すると、躊躇することなく訴訟を起こし、相手を追い詰めて、最終的に思い通りの結果を手に入れてきた。今回も一市民に戻ったコミー前長官に対して同様な圧力をかける戦術に出たといえる。大統領選挙運動中にも、競争相手であったテッド・クルーズ候補を何度も告訴している。

こうした問題が起こると、お互いに相手を誹謗中傷し、相手の信用を毀損させようとする行為が取られる。日本でも、文科省の前川喜平前事務次官が内部告発をしたとき、官邸が意図的に同氏が出会い系パブに通っていた情報を流し、同氏が信頼に値しない人物であると印象づけようとしたのも同様な例である。

問題の核心は特別検察官の調査に委ねられる

ただ、問題は誹謗中傷合戦にあるのではない。今後必要なことはコミー前長官の議会証言で問われなかったことを明らかにすることであり、トランプ大統領の行動の合法性を問うことである。さらに、このスキャンダルによってトランプ大統領の政治的な求心力がどうなるかであり、本当に弾劾という事態が起こりうるのかである。

イギリスの新聞『ガーディアン』(6月10日)は、「トランプ大統領は間違いなく生き延びた。しかし、自ら致命的ともいえる傷を負った」と書いている。議会での証言は無事に切り抜けたとしても、次に待ち構えているのはロバート・モラー特別検察官の捜査である。クリントン大統領のスキャンダルの際のケン・スター特別検察官の執拗な捜査は今も記憶に新しい。トランプ大統領もこれから数年にわたって司直の捜査を受ける可能性がある。コミー前長官は議会証言で、トランプ大統領が司法妨害を行なったと断定する発言はしていない。今後、特別検察官や法律の専門家の間で議論されるだろう。

さらにトランプ大統領にとって問題なのは、特別検察官が司法妨害の容疑にとどまらず、トランプ大統領およびトランプ一家とロシアとのビジネス上の関係も含めて捜査するであろうことだ。政権発足後、まだ4カ月あまりに過ぎないが、政治的に大きな足かせをはめられた状態で、政策運営をしなければならない。

弾劾に関しては、現状では可能性は小さい。弾劾の訴追は下院の過半数の同意によらなければならない。共和党はトランプ支持の姿勢を崩しておらず、下院が弾劾決議をする可能性はほぼないだろう。ただ、アメリカのメディアの中には、「"トランプ大統領の終わり"が始まった」と、予想する向きもある。

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