マクラーレン「570GT」をトコトン試してみた 速いのは当たり前、上質な室内と乗り心地も
コアモデルとなるのが12Cで始まったスーパーシリーズだ。フェラーリでいえば488クラス。先だって、マクラーレン初のフルモデルチェンジモデルである720Sがデビューしたばかり。
そして、入門用というべき存在がスポーツシリーズである。フェラーリなら、さしずめカリフォルニアだが、マクラーレンはミドシップ。その違いは大きい。フェラーリもそれには気づいているのだろう、おそらく復活がウワサされるディーノが、フェラーリの入門ミドシップカーとなるはず。
今回紹介する570GTは、540C、570Sに続く、スポーツシリーズの第3弾で、車名の数字が表すとおり570Sのバリエーションだ。
秘密の扉はリアにあり
見た目に570Sとの違いはごくわずか。一見、ほとんど判らない。570馬力を発する3.8リッターV8ツインターボエンジンなど、メカニズムもほとんど同じ。重量こそ、わずかに増えているが、強力なエンジンスペックを知れば、目くじら立てるほどの差ではないだろう。
違いを見つけたければ、リアセクションに回って見て欲しい。570GTには、なんと、パノラミックルーフとガラスハッチが備わっていて、ハッチは側面をヒンジにして昔のジャガーEタイプの用に開き、なかを覗き込めばレザー仕立ての豪華なラゲッジルームがあるのだ。つまり、GTという名が表す通りロングドライブにも向く、実用的なスーパーカーなのである。
マクラーレン製のミドシップ・スーパーカーといえば、伝説の3シーターF1はもちろんのこと、ピュアスーパーカーブランドとしての出発点となった12C以降、どのモデルにおいても“速く走るための機能”を最重視した、ストイックな造りのインテリアが提供されてきた。
ところが、この570GTはまるで違っている。特徴的なディヘドラルドアを跳ね上げてみれば、その先に、うわっと心浮き立つラグジュアリィな空間があった。
スポーツシリーズのカーボンモノコックは、シルが前方に向かって低められており、床面も車体中央に向かってややえぐれているため、非常に乗り込みやすい。
上等なレザーで覆われた室内を見渡すと、グラブボックスや小物入れ、カップホルダーがみえる。随分と乗り手に優しくなったものだ。速く走るために、聖域なき軽量化に務めてきたマクラーレンしか知らない筆者にとっては、その光景が、どこか不思議に見えてしまったほど。