「バツ3同士の再婚」を決めた2人の"言い分" なぜ離婚と結婚を繰り返すのか

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雅美さんは大学教員として活躍しつつ、看護師の資格もある。雄介さんとの出会いの場所である介護施設には土曜日だけのアルバイト看護師として勤務していた。3人の子どもを育ててきた経験もある。生活力も経済力もある女性なのだ。それでいて雄介さんを夫としてきちんと立ててくれる。

「夫は娘たちから最初は嫌がられていました。それでも臆さずにコミュニケーションを取り続け、いまでは頼りにされています。彼は(コミュニケーションの)達人なんです。私は大雑把な性格なので、娘たちは学校関係の物品をそろえるときなどは夫に頼んでいます」

雄介さんはどちらかといえば家庭向きの男性なのかもしれない。スポーツインストラクターとしての仕事に励みつつ、雅美さんの娘2人の新しい父親として奮闘している。

2人のかつての結婚相手は、家事や仕事をあまりしない人が多かった。だからこそ、いまの2人はなんでも自分でやる力が備わっている。特に雅美さんにとっては、家事も仕事もしてくれる夫の存在は新鮮な喜びだ。

「お互いが自分のできる範囲でやると、重なり合う部分がたくさんあります。それが生活の潤いなんですね」

雄介さんは1回目と3回目の結婚で生まれた子どもの養育費を払い続けている。3回目の結婚相手の連れ子2人も含めて、自分の子どもは4人いると思ってきた。すでに成人した雅美さんの息子と、同居している娘2人を含めると7人の子どもの父親なのだ。

「できれば全員を僕たちで引き取りたい。最初の結婚の子どもにもいつか会えると信じています。どんな形でもいいから幸せになってほしいです。そのためにも僕たち夫婦はなかなか死ねないね、と妻とよく話しています」

不運はずっと続かない

現代における結婚は、当事者2人の幸せに第一の意義が置かれるべきだと思う。基本的には自立した大人同士が結ばれ、お互いの短所は補い、いたわり合って暮らす。相手の長所を褒めて感謝していると、今まで知らなかった自分の長所も見いだせたりする。安心と自由を前提にした生活で、少しずつ健康に朗らかになっていく。

すると、他者や社会に対して愛情を注ぐ余力が生まれる。雅美さんのいう「生活の潤い」であり、雄介さんの「かつての結婚相手の連れ子も含めて引き取る」夢でもある。自分たちが幸せになったからこそ、外に向けて明るいエネルギーを発することができるのだ。

雄介さんと雅美さんはいま、2人の経験と知識を社会に還元するためのビジネスも行っている。その話を筆者に押し付けようとはしないが、尊敬し合いながら、仕事でも同じ方向を見て歩んでいることは伝わってくる。「今回の結婚生活は大丈夫ですか」と問うことは不要に思えた。

それぞれ3回の離婚話を聞くと、未熟さや短慮だけが原因ではなく運の悪さも影響しているようだ。しかし、不運はずっと続かない。相性の良い結婚相手と出会うという幸運もいずれきっと訪れる。2人はその幸運をしっかりつかんで、社会貢献もできるほど大きく育てようとしている。穏やかで楽しそうに寄り添う2人にとって、この結婚は「4度目の正直」だったのだろう。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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