「北京お見合い広場」に親たちが殺到するワケ 婚活アプリ全盛の時代になぜアナログ婚活?
「男孩儿? 女孩儿?」(男の子? 女の子?)
きた! 私にもすぐに声が掛かった。私も20代の子どもがいてもおかしくない年齢だ。お嫁さん(お婿さん)探しをしにきた中国人の親だと勘違いされたらしい。一瞬戸惑い、すぐに返事ができなかったものの、私は自分がこの場にいてもおかしくない「あるストーリー」を思いついた。私が日本人であることは、口を開けばすぐにわかってしまう。だから、私の夫は中国人ということにして、一人娘のために初めて中山公園にやってきた日本人妻だと言おうと思ったのだ。
不動産を持つことはステータスであり結婚の条件
地面に並べられた紙を熱心に見て歩くと、また「男の子かい? 女の子かい?」という声が掛かった。平静を装って「え~っと、うちは女の子です」といってみた。相手の表情がぱっと明るくなった。その人は50代後半くらいの女性で、30歳の息子のお嫁さんを探しているのだという。息子の略歴が書かれた紙を見せてくれた。そこにはこう書かれていた。
男性、清華大学卒。国有企業勤務。北京戸籍あり。身長181センチメートル。マンションあり。1989年以降生まれの女性を希望。大学本科以上の学歴を希望。容姿端麗であること……。
北京大学と並び中国の最難関といわれる大学を卒業し、まだ30歳。略歴を見るかぎり、申し分ない。というか、こんなにいい経歴の男性にはめったにお目にかかれない。それなのに、なぜ結婚できないのか?
不思議に思った私は正直に尋ねてみたが、「奥手で、女性に対して消極的なんだよ。まだ結婚する気がないみたいなんだけど、ボヤボヤしていたらいい相手がいなくなっちゃうでしょう? だから私がこうして嫁を探しに来ているんだよ」という返事だった。
中国で高学歴、国有企業勤務、しかも戸籍があるといえば、よりどりみどりでモテモテのはずだ。本人にその気がなくても、女性が黙っていないだろう。特に北京の都市戸籍を持っているという点が中国ならではの最強ポイントだ。日本では考えられないことだが、中国では北京か上海の都市戸籍を持っていることは結婚の際の最大の強みになる(中国人の戸籍は日本のように1種類ではなく、都市戸籍と農村戸籍に分けられる)。
北京の都市戸籍(都市戸籍には個人戸籍と団体戸籍の2種類あり、詳細は省くが、北京生まれの人は基本的に個人戸籍を所有)を持っていれば、不動産を自由に買うことができるからだ(この男性の場合はすでに不動産を持っていたが)。
逆に、北京に住んでいても農村から出てきた農民工や、北京で働き始めてまだ数年しか経っていない外来者は、たとえおカネがあったとしても不動産を買う権利がない。
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