Nゲージ大手3社、価格・製品戦略は大きく違う 日本の「鉄道模型ビジネス」を学術的に考察

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次に、このNゲージ市場の小売業者は地域によってどのように分布に偏りがあるのか、分析した。この分析では、主要Nゲージメーカーである3社(関水金属、トミーテック、マイクロエース)のWebページに掲載されている都道府県別販売店リストから、2015年の「国勢調査」による都道府県別人口を基に、10万人あたりの販売店数を算出した。

都道府県別店舗数では、3社とも東京都が最も多く(関水金属89店、トミーテック81店、マイクロエース76店)、いずれも大阪府が2番目に多い(トミーテック63店、関水金属60店、マイクロエース57店)。また、沖縄県には3社とも販売店がない。これは、沖縄県ではゆいレール(モノレール)以外に鉄軌道事業が存在しないため、鉄道そのものへの近接性がないものと推察できる。

一方、人口10万人あたりの販売店数は全国平均で、トミーテック0.545店、関水金属0.492店、マイクロエース0.465店で、トミーテックが最も多い。さらに都道府県別での偏在の傾向は以下のように読み取れる。

関水金属、トミーテック、マイクロエース、総務省統計局統計調査部国勢調査課資料を基に筆者作成

① 人口10万人あたり販売店数は3社とも西日本に多い。

② 京都府では、関水金属とマイクロエースでは人口あたり販売店数が最も多い。トミーテックでは2番目に多い。

③ 徳島県では、関水金属の販売店はなく、トミーテック、マイクロエースの人口10万人あたり販売店数も少ない。

製品戦略を定量的データで分析

続いて、製品群の価格帯ならびに種類から、関水金属、トミーテック、マイクロエースの主要Nゲージメーカー3社がどのような製品戦略に基づいて事業展開しているか定量的データから分析する。

ここでの考察は、次の2つの分析を通じて主要Nゲージメーカー3社の製品戦略ならびに価格戦略を分析する。なお、分析対象は関水金属の「KATO」ブランド、トミーテックの「TOMIX」ブランド、マイクロエースの「マイクロエース」ブランドの製品に限定する 。使用する製品・価格のデータは、①主要鉄道模型(Nゲージ)メーカー3社がWebページで製品リストとして掲載しているすべての車両セットの製品ならびにメーカー提示価格、②同じく主要3社の「電気機関車模型製品」の製品バリエーションとメーカー提示価格をデータとした。

なお、「車両セット」とは、電車のように編成を組んで運行される実在の鉄道車両のうち、先頭車両や特徴的な車両などを選別して、両数を減らして1編成を組んでNゲージを楽しめるように同梱したセットのことで、基本セットのほか、実在の編成を再現できるように増結セットなども販売されている。また、「電気機関車模型製品」の製品バリエーションとは、実在の鉄道車両EF81形電気機関車にはさまざまなバリエーションがあり、Nゲージメーカーがその実在車両に対応して製品化しており、このバリエーションの数を指す。

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