Nゲージ大手3社、価格・製品戦略は大きく違う 日本の「鉄道模型ビジネス」を学術的に考察

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これらデータを用いた理由は次の3点にまとめられる。

第1に、主要Nゲージメーカー3社のすべてが車両セットと電気機関車模型製品を製品化しており、かつ製品群の中でも年間の新製品の市場投入種類数が多いため、各社の製品戦略を比較するにあたって適切な対象であると判断した。

第2に、車両の中でも電気機関車は販売単位が原則として1両であり、かつすべてが動力である超小型モーターを搭載している等の特性から、新幹線や客車などの他製品と比較して、価格設定の制約要因となる原材料・流通等のコストが近似であることが推察され、価格設定における主要Nゲージメーカー3社の戦略的意図が観察しやすいことが予測される。

KATOとTOMIXは相対的に価格が安め

第3には、電気機関車は模型の原型となる実在の鉄道車両が限定されるため、製品化される車両とそのバリエーションの選定においても各社の戦略的意図が観察しやすいことが予測される。

主要Nゲージメーカー3社が2017年現在で販売している車両セット製品すべての価格を調べてみると、平均価格帯は、「TOMIX」と「KATO」の2つのブランドが「マイクロエース」と比較して安く、価格帯の集中度は総体的に「TOMIX」と「KATO」の2ブランドが高く、対照的に「マイクロエース」は低い。

出所:関水金属、トミーテック、マイクロエース資料を基に筆者作成

平均価格帯は、車両セット製品と同様に「KATO」と「TOMIX」の2ブランドが「マイクロエース」と比較して安い。価格帯について、「TOMIX」は6000円台に全体の80%が集中し、「KATO」は6000円台~7000円台に全体の80%が集中した。「マイクロエース」は5000円台~8000円台に全体の80%が集中しており、車両セット製品と同様に総体的に「TOMIX」と「KATO」の2ブランドが価格帯の集中度が高く、「マイクロエース」の価格帯が分散する傾向となった。平均価格を比較したところ、「TOMIX」と「KATO」の2ブランドが「マイクロエース」と比較して安く、なかでも「TOMIX」が最も安くなっている。

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