日本の鉄道模型が欧州で売れ続けるワケ ガラパゴス化した日本の独自規格が大逆転

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カトーが2013年に発売した「アルプスの氷河特急」は欧州で大ヒットとなっている

スイスの山岳リゾート、サンモリッツとツェルマットを約8時間かけて結ぶ「氷河特急」。大きな窓とスイス国旗をあしらった赤い車体が特徴の観光列車は、世界各国から訪れる観光客の人気を集めている。

日本を代表する鉄道模型ブランドの一つ「KATO」から、この列車のNゲージ鉄道模型が「アルプスの氷河特急」として発売されたのは2013年の春。約2年半が経った今も「ずっと売れ続けています。造っても造っても売れるんです」と、製品を企画したカトーの営業部副部長、関良太郎さんは語る。

これまでの販売数は日本国内と欧州でほぼ半々。日本での人気が高く、海外旅行で乗ることも多い列車だけに「いわゆる鉄道ファンではない方が、旅行で乗った列車が模型になっているのを見て手にしていただく機会も多い」(関さん)といい、従来の模型ファンとは異なる新たなユーザー層を開拓している。

日本の「Nゲージ」はガラパゴス規格

欧州での売れ方は日本と少し違う。新製品をリリースしても爆発的ヒットにはならないものの、一定数が継続的に売れ続けるという。こんな欧州市場にも受け入れられたことで、息の長い人気商品の座を獲得した。

ただ、この模型には、欧州の模型とは異なる特徴がある。「日本独特のNゲージ規格」である実物の1/150サイズでつくられているのだ。

「N」や「HO」など、鉄道模型には線路を共用したりメーカーの違う車両と連結したりできるよう、世界的に統一された規格がある。Nゲージは幅9mmの線路を使用する規格で、もともとは欧米で一般的な線路幅1435mmの「標準軌」の鉄道を実物の1/160に縮小した規格だ。

「1/150・9mm」のNゲージは、狭軌の鉄道が発達した日本ならではの規格である

だが、日本の鉄道の大半は標準軌の新幹線を除けば線路幅が1067mmの「狭軌」のため、1/160スケールに合わせるなら線路の幅を狭くするか、逆に線路幅を9mmとするなら縮尺を1/120程度(1067÷120=8.891...)にする必要がある。とはいえ、線路を欧米のNゲージと共用できないのは不便だし、縮尺を1/120とすると今度は欧米のNゲージより車体がはるかに大きくなってしまい、共存できなくなる。

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