新幹線車内を"広く"感じさせる「錯覚」の力 デザインに隠されたこれだけの秘密
日本を代表する幹線として、年間1億5500万人(2013年度)もの乗客を運ぶ東海道新幹線。
普段はビジネスパーソンが乗客の7割を超えるなど、文字どおり日本経済の大動脈として高い乗車率を誇るが、お盆や正月には帰省客や旅行客でごったがえし、乗車率は150%を超えることもある。
その車内をゆっくりと見まわしてみたことがあるだろうか。
現在、東海道新幹線で運行されている700系車両は運行開始当時、マスコミから“カモノハシ”とニックネームをつけられるなど、車体形状に注目が集まりがちだ。一方で、乗り込んですぐノートパソコンを開き作業を始められるのも、仕事の合間にちょっと一休みとうたた寝ができるのも、車両の洗練された外観同様に磨き抜かれた車内空間ゆえだ。その快適さを実現するのが、デザインの力である。
快適さをもたらす「錯覚」のしかけ
乗客は、たとえば東京から新大阪間に向かうなら2時間22分(最短)、広島までとなれば3時間50分もの間、車両のなかでじっと座っていなければならない。
普通車であれば3mほど(車体幅は3360mm)の間に5人分の椅子が並び、かつその間に通路がある。そう聞くと「狭い」と感じそうになるが、その数値から受ける印象ほどに狭くは感じない。そこには「錯覚」をもたらす、デザインの力が大きく関与している。
東海道新幹線300系車両をはじめ、700系やN700系、N700Aなど多くの新幹線車両のデザインに参加してきた福田哲夫氏は、こう語る。
「ある空間の幅や高さといった物理的な距離は、測れば数値が出ます。その数値以上に、“広く”したり、“高く”したり、一方で“狭く”も“低く”もできるのがデザインの力です。空間の物理的距離以上に“広く”感じ、快適に過ごしてもらえるようにするのが、デザインの大きな仕事のひとつともいえるでしょう」
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