新幹線車内を"広く"感じさせる「錯覚」の力 デザインに隠されたこれだけの秘密

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「非日常のびっくりするような空間は求められてはいませんが、それでもビジネスライクでデザインをしているかといえば、そうではありません。また、ビジネスユースだから黒と白で統一すればいいのかというと、それも違いますしね。そのあたりのチューニングが非常に難しい」

チューニングが意味するのは、どういった客層に向けて考えるのか、といった話だけではない。

車内空間は、単純な機能の足し算で快適性を生み出していくわけにはいかない。乗り物である以上、まして時速285kmという高速で走る車両のなかにしつらえられた空間である。高速運行には車体の軽量化が欠かせない。軽量化を大命題とされた車体にあって、快適さを実現する。それは矛盾を解決していく作業であるともいえよう。

材料を厚く、重くすれば、走行時の共振や透過音を減らし、静かな車両を作ることができる。だが、そうもいかない。さきほど述べた座席の話にしても、布に編み込む糸を増やしていけばより快適になるし、消音効果も増すわけだが、1両がおよそ40トンもある新幹線車両においては、実に糸の本数までもが軽量化の対象となり吟味されているのだ。とはいえ、もちろん減らしすぎれば、毛倒れしてしまい快適さが損なわれる。

新幹線に集まる、進化したマテリアルと技術

反比例するような状況にあって福田氏らデザインチームは最適解を求めて試行錯誤を繰り返すわけだが、ときにそうしたトレードオフの関係を突破するようなマテリアルや技術がもたらされることがある。福田氏は言う。

N700系のイメージスケッチ(イラスト:福田哲夫)

「これまで一生懸命やってきたひとつの成果でしょう。ありがたいことに、こうしたすぐれたマテリアルが東海道新幹線に集まってくるのです。加えて、そうしたマテリアルを検証して実用化に向けて知恵を絞ってくれるエンジニアチームの存在が欠かせません。決して、デザインだけで今の快適な車内空間がつくられたわけではないのです」

マテリアルの進歩が美しさに磨きをかけ、その美しさに惹かれ、またマテリアルが集まってくる。

美しい流線形によって人々に夢を与える新幹線――それは、外からだけでなく、内からもカタチづくられ、日本の誇る「Shinkansen」として、世界をも魅了する。

訪日外国人観光客は増加の一途をたどっている。東京を経て外国人に人気の古都、京都に向かうケースも少なくないだろう。その道のり約2時間10分が、「日本のおもてなし」を感じる時間となる。

金丸 信丈 編集者・鉄道ライター

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かねまる のぶたけ

編集者・鉄道ライター。1974年宮崎県生まれ。大学卒業後、大手市場調査会社に入社。その後、編集プロダクションにてビジネス関連の書籍、ムックを中心に、編集に携わる。

鉄道関連の編集・執筆に『最新 鉄道ビジネス』『徹底解説 JR 東日本』(以上、洋泉社)、『祝50年!! 栄光の「新幹線」』(宝島社)など多数。

今年の夏休みは、小学生の息子と普通列車を乗り継ぎ、千葉~神戸・三ノ宮を往復した。

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