日本の鉄道模型が欧州で売れ続けるワケ ガラパゴス化した日本の独自規格が大逆転

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だが、実際に発売されると状況は一変した。発売からわずか半年後には、ドイツで開かれた別の見本市で「欲しいのに手に入らない」「展示品を売ってくれないか」と来場者に迫られるほどに。今では「1/150・9mm」について説明を求められたり、違和感を持たれたりすることもほぼなくなったという。

欧米で馴染みのないはずの「1/150・9mm」の模型が評判を呼び、売れ続けていることについて、関さんは「既存のNゲージのレールで楽しめる手軽さとクオリティ」が受けたのではと推測する。

これまで欧州の鉄道模型ファンは、氷河特急をはじめとするスイスのメーターゲージ鉄道の模型が欲しいと思えば、一般的な標準軌の鉄道模型とは別に線路も用意しなければならなかった。だが、カトーの製品なら、Nゲージの線路を持っていればそのまま楽しむことができる。手軽さが重要なファクターとなったのだ。

新たな構想が続々と登場

実際、スイスメーターゲージ鉄道模型の老舗であるベモ社は、最近になってこれまでの「1/87・12mm」の模型に加え、一般的なHOの線路(幅16.5mm)が使える「1/87・16.5mm」の模型を売り出した。線路を共用できる手軽さを売りにした製品だ。

カトー製品に刺激を受けたとも見える動きについて、関さんは「特に何か話があったわけではないが、今までの経緯からすると恐らくそうでしょう」と見る。実はカトーは「氷河特急」の製品化にあたって鉄道会社とつながりの深いベモ社経由で図面の提供などを受けており、ある種の協力関係ができているという。日本独特の規格でつくられた製品が、欧州メーカーの製品企画にも影響を与えたと言えそうだ。

新しい可能性を広げた「氷河特急」は単発で終わることなく、今年には同じレーティッシュ鉄道の新型電車「アレグラ」も製品化。さらに車種のラインナップを増やすことも検討しているという。また、実車の走行音や汽笛の音がコントローラーから出せるサウンドシステムや、スイスの駅や車内で記念品として販売する構想も……と、勢いは止まらない。「いろんな可能性を秘めているんですよね」と関さんは語る。

既存の鉄道模型ファン層以外の開拓や、欧州でのNゲージ普及の足がかりなど、さまざまな新展開を切り開いてきた「氷河特急」。日本独特の「1/150・9mm」でつくられた列車の行く先には、これからもさまざまな可能性が広がっていきそうだ。

(撮影:梅谷秀司)

小佐野 カゲトシ 鉄道ライター

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おさの かげとし

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年独立。国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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