「同性婚」合法化へ動き出す、台湾の光と影 同性愛者vs反同性愛者、宗教団体の対立激化

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このような雰囲気の中、同性愛反対者は追い詰められてきたとも言える。キリスト教関係者や同性愛反対者たちは、自らの主張をどう伝えればよいのか、わからなくなったのだ。自分たちの主張が多くの人に聞き入れられず、かえって怒りを招くことさえあった。結局、彼らは同性愛者の集会などの現場に来て、「私たちも被害者なのだ」という意味不明な主張も行うようになっていた。

祁さんはこう打ち明ける。「1975年から私は同性愛者になることにした。1986年にカミングアウトするまで、自分に誠実であろうと準備してきたと思う。私の眼中には、私に反対する人はいない。私が望む合理的な権利を、あなたがただ与えてくれればいい。そんな考えだ」。

多くの同性愛者が声を出せないでいたり、あるいは他の人からの同情を望んでいることから見ると、祁さんは内に秘めた強い意志と戦略的な思考を持っているように思える。「2倍の努力をしても、効果は半分しか得られない、ということを私はしない。私を攻撃する人に対しては、互いに共感できる何らかの価値を見出し、私の領域をその価値から共有することを広めていけば、反対者は私を攻撃できなくなる」と自信を込める。

民法の修正か、特別法の制定か

祁さんはまた「私は宗教と対立したくない。キリスト教は神がすべての人を愛すると言う。それなら、私も神から愛を受ける人間だ。私が『イエスが私を愛すると言い、私もあなたを愛する』と言えば、同性愛に反対する人たちは反論できなくなる」と述べた。祁さんはこのような方法をこれまで続けてきたため、台湾で同性婚支持は広く受け入れられるようになったと考えている。

今回の憲法解釈について、大法官は2年以内に法律を修正、あるいは制定し、同性結婚の権利を与えよとした。2年以内にできない場合、同性カップルは役所で戸籍に登録できるようになる。ここからは2つの方向を選択できる。一つは民法の修正だ。「同性結婚が民法のすべての内容に適用される」という規定を追加したり、もともとあった「男女」「夫婦」「父母」などの単語を、「両者」「配偶」「双親」などに言い換えることによって、同性愛者も民法の適用を受け入れられたりすることだ。

ほとんどすべての同性愛者が民法の修正に賛成する。しかしここで、もう一つの選択肢が出てくる。同性愛反対者と一部の政治家は「民法を直接修正すれば社会秩序に混乱を来す」とし、同性愛者のための「特別法」を別途制定した後に結婚する権利を与えるべきだと主張しているものだ。

この主張に、祁さんは怒りを隠さない。「特別法がいい、と同性愛者が言うのであれば、私は何も言わない。だが、一部の異性愛者や同性愛反対者が口を開けば、いつも同性婚を理解する、同性婚を尊重する、同性愛者を包容すると主張するが、同時にわれわれが望むことに彼らは耳を傾けない。そんな彼らには反対する資格はない」。

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