ビール値上げの陰に潜む「販売奨励金」の正体 不当廉売の源泉、いたちごっこの歴史を追う

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ところで、海外ではリベートは存在しないのだろうか。結論からいうと、存在する。ただ、日本とはやや趣が異なる。宣伝広告費として、小売店が払ったものを、コスト負担するものだ。たとえば、在庫のスペースの確保、カタログ作成……といった明確なものだ。あるいは、商品の陳列を有利にするための販売協力金もある。それらは、allowanceといった単語で総称されている。

小売店が発達してきたため…

もともと、日本では零細の小売店が発達してきたこともあり、利益保護の観点から政治が動いてきた。日本には下請代金支払遅延等防止法があるが、同法は明確に、零細の事業者保護を謳ったものだ。そこでは、大きな企業が小さな企業に仕事を委託する際にさまざまな規制がある。独禁法も、優越的地位の濫用を禁じている。海外では、優越的地位の濫用、という概念がさほど強くなく、価格を安くしたとしても2社間の契約だからなあ、と考えられている。

私は不当廉売を理由とした中小企業の圧迫は軽減したほうがいいと考えている。同時に、値上げを目的とする規制もどうかと私は思う。コンビニは、これまで比較的にリベートが少なかったので、価格上昇にはいたらないだろう。だからコンビニにとってはむしろ追い風になるかもしれない。また、クラフトビール各社は、そもそもリベートが存在しないケースが多く、価格はメジャー4社と縮んでくるだろう。また酒税の一本化も予定されている。

しかし、この6月を機にビール類を買い控える消費者は存在する。中長期的には、ビール業界を呻吟させるのではないか、と私は思うのだ。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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