そもそも1990年代は、ビール会社間のシェア争いが激化したことで、少しでも多くの奨励金を与え、自社シェアを伸ばそうとしてきた。その後、バブル崩壊によって、そのリベートは値下げの原資になってきた。さらに、酒類販売が緩和されたあとは、小売店同士の競争にリベート原資が活用されてきた。
これは、もちろんビールに限ったことではない。
公取委は興味深いレポートを2004年に発表している。「家電製品の流通実態に関する調査報告書」というそのレポートは、同業界のさまざまな商習慣について指摘しているが、そのなかでも凄まじいのは、当時に横行していたリベートだ。
たとえば、個別メーカーのキャンペーンに際して、メーカーから量販店に支払われるリベートならば、まだ理解ができる。ただ、売り場の改装に伴うリベートとなると、やや強引さが否めない。また、駐車場整備リベートもある(たくさん売れるように、量販店の駐車スペースを拡充するためのものだ)。笑ってはいけないものの笑ったのは、運動部設立協賛というものだ。もちろん販売店では、メーカーの商品を売るために体力は重要ではある。ただし、それをリベートの形とすると、それはなかなか看過できない。
そして家電量販店は、オープン価格に移行するにいたった。
ビールの特殊性
ビール業界も2005年ころからリベートの抑制、あるいは廃止をもくろむ動きもあり、一部では確かに廃止された。ところが、小売店などからの反発に合い、すべてを廃止にできなかった。量に応じたリベートではなく、「機能リベート」などが“発明”された。これは、在庫機能や物流機能、あるいは小売店のシステム化などに対して、お礼として支払われるものだ。これは、実際には、それまでのリベートと何ら変わるところはなく、値引きの原資として活用され続けた。
そこでついに当局は、法改正を政治に促すに至った。これまで国税庁は廉価販売について、指導しかできなかった。そのあとは、公取委が調査をしていた。これからは、国税庁が違法な廉価販売について、その小売店の酒類販売免許も取り消せる。これまでは「不当廉売をやめろ」といっても実質的には効果がなかったところ、実質的な力を得た格好だ。
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