「競技人口減」で先が見えない日本野球の現在 野球経験者の減少でプロ野球の土台も揺らぐ

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小中学校の硬式野球は、高校野球強豪校、そしてプロ野球選手への「登竜門」になっている。中学時代にDeNAの筒香嘉智は大阪府の堺ビッグボーイズ、ヤクルトの山田哲人は兵庫県の宝塚リトルリーグで、日本ハムの大谷翔平は小学校は岩手県の水沢リトル、中学校は一関リトルシニアでプレーしていた。

もちろん、中学時代、軟式野球をしていたプロ選手もいるが、多くは子どもの頃から硬球で野球をしていたのだ。甲子園、大学野球、そしてプロ野球を目指すような本格的な競技者は、少子化の中でも減っていない。

軟式野球の競技者減が示す、先行き不安

一方で、軟球で野球を楽しむようなライトな競技者数は減少の一途をたどっている。特に小中学校で2010年以降に激減しているという構図が見えてくる。

軟式野球に親しむようなライトな愛好者は、成人すればいわゆる「野球ファン」になっていくことが多い。今も多くの野球ファンは、小中学生のころに軟式野球に親しんだ経験を持っている。それが下地になってテレビで観戦したり、試合を見に行ったり、グッズを買ったりしているのだ。

ライトな愛好者は、やがて野球関連市場の優良な消費者へと姿を変えて、日本野球を支えてきた。つまり、ライト層の減少は、消費者の減少につながり、近い将来に野球関連市場が縮小していくことを意味している。

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このまま事態が進行すれば、球団経営も悪化し、プロ野球は今までのような高額年俸で選手を抱えることはできなくなる。何らかの形で縮小を余儀なくされるのは間違いない。プロ野球がシュリンクすれば、当然、その下の大学、高校などでのコアな競技人口も減少していく。

西武ライオンズが幼児向けの「野球遊び」の普及活動に力を入れているのは、まさにこうした図式が頭にあるからなのだ。「すそ野の縮小」への危機感があっての取り組みにほかならない。

なかなか実態が見えにくい部分もあるのだが、それでも日本の「野球離れ」は、確実に進行している。

今回紹介した埼玉県の4球団のような野球界の取り組みで、食い止めることができるかは未知数だ。だが、何もしないままでは、先細りが避けられない。野球界には、競技普及策にもっと積極的に取り組んでいく姿勢が求められている。

(文中一部敬称略)

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