WBC日米戦、「世紀の大誤審」の審判よさらば 引退のボブ・デービッドソンに表する「敬意」

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2006年3月12日のWBC2次ラウンド、日本-米国戦で西岡のタッチアップがアウト判定となり、王監督がデービッドソン主審に猛抗議した(写真:Newscom/アフロ)

第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場する侍ジャパンの強化合宿が宮崎市の宮崎県総合運動公園で始まった2月23日。サンマリンスタジアムで練習を見ていると、今回チームマネジャーを務めるNPB職員の中村匡佑さんが話しかけてきた。

「ボブが辞めましたね。寂しいですよ」

その日の朝刊が64歳のベテラン審判の引退を伝えていた。日本でいちばん有名なMLB審判員、ボブ・デービッドソンである。

日本の野球ファンが忘れがたい「あの瞬間」

忘れもしない2006年の第1回WBC2次ラウンド1組の初戦、日本-米国戦(エンゼルスタジアム)。日本は3-3で迎えた8回1死満塁から岩村明憲が左翼へフライを打ち上げ、3塁走者の西岡剛(現阪神)がタッチアップからホームを駆け抜けた。

米国守備陣は西岡の離塁が早いとアピールしたが、2塁塁審が両手を広げて「セーフ」をコール。よし、勝ち越しだ。そう思っていたら、米国代表バック・マルティネス監督の抗議を受けた球審のボブはあっさり判定を覆すのである。

「野球がスタートしたアメリカで、こんなことがあってはいけない」

左手の人差し指を横に振りながらベンチを飛び出した王貞治監督(現ソフトバンク球団会長)に寄り添い、通訳として怒りをボブに伝えたのが中村さんだった。

私はこの光景を2次ラウンド2組が行われたプエルトリコのサンフアン、ヒラム・ビソーン・スタジアムで見ていた。初代チャンピオン最有力候補と思っていたドミニカ共和国を追いかけていたのだが、日本の試合は気になる。ガランとした報道用テントの中でモニターテレビに食い入っていたのである。

信じられない判定変更。テレビは左翼手ランディ・ウイン(ジャイアンツ)が捕球した瞬間と西岡の離塁を同時に映す画面を繰り返した。スタートには何の問題もない。一緒に見ていた米国人記者も「こりゃあセーフだ」と肩をすくめた。

しかし、ボブは中村さんが必死に訳した王監督の抗議を退け、試合続行。日本は9回、藤川球児(現阪神)が2死満塁からアレックス・ロドリゲス(ヤンキース)にセンター前へ抜けるヒットを許し、サヨナラ負けを喫するのである。

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