それにしても、少子化が進む中で高校野球の部員数が横ばいで推移しているのは、一見不可解に思える。部員数が横ばいでも、結果的には高校生全体に占める硬式野球部員数の比率は年々増加している。
確かに、甲子園を目指すような強豪高校の野球部には、今も多くの入部希望者が押しかけている。
高校野球「私立」と「公立」の巨大格差
昨年秋、大阪府の複数の強豪私立高校の監督に話を聞いたが、「入部志望者は全く減っていない」と口をそろえた。そのうちの1人は「素質がそれほどでもない生徒とその親には、3年間試合に出られないかもしれない。それでもいいか? と念を押して、納得の上で入部してもらっている」と、入部志望者が多いがための苦労もあると話した。
一方、大変なのは公立高校だ。中には部員数が激減しチームが編成できない野球部も続出している。甲子園の常連になるような強豪の公立高校の存在は、すっかり影を潜めてしまった。高知県や福島県のように過去10年、私立高校が春夏の甲子園をほぼ独占し、公立高校の出場がほとんど絶望的になった県もある。
高野連は2012年にこれまで特殊な事情に限り認めてきた「連合チーム」を全面的に認可した。その背景にあるものが何かというと、"格差"である。審判や指導者から「強豪校と人数をそろえるのがやっとの弱小校とでは、打球や投球の速さが全く違う。試合をさせるのは危険ではないか」という声も上がるようにもなっている。強豪私立高校は50人、100人という部員数を擁し、膨張しているが、それはごく一部に過ぎず、存続の危機を迎えている野球部も多いのが実情だ。
大学野球も競技人口は増加している。全日本大学野球連盟は、2007年から部員数を発表しており、これによると10年前から37.8%も増えている。
文部科学省の統計によると、2005年から2014年の10年で大学数は726校から781校に55校増えている。特に私立大学は553校から603校と50校も増えている。こうした新設校の中には、野球部を設置する学校も多い。野球部が活躍すれば、大学名のアピールにもなるし、学生を募集するうえでも有利になるからだ。
小中学生も硬球でプレーする。野球を教える組織としては、先に述べた軟球でプレーするスポーツ少年団、中学校の部活動を束ねる中体連などとは別に、硬球でプレーするリトル(4~12歳)、リトルシニア(中学生)、ボーイズ(小中学生)、ヤング(小中学生)、ポニー(中学生)などのリーグに加盟するチームも存在する。
上記の主要5リーグの本部に加盟選手数の増加について問い合わせたところ、実数を把握していない本部もあったが、回答はいずれも横ばいか微減だった。軟式野球とは違い、関係者からは選手の減少に危機感を持つ深刻な声は上がっていない。中にはポニーベースボール協会のように、選手数が2010年の700人から2000人と大幅に増加しているリーグもあった。
5リーグ合わせて小中学校のチーム数は2300程度。加盟選手数は6~7万人ほどと推測される。彼らの多くは、中学を卒業すると高校の硬式野球部に入る。
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