「競技人口減」で先が見えない日本野球の現在 野球経験者の減少でプロ野球の土台も揺らぐ

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前回の記事「ファン減少続く日本野球の『超不安』な未来」で、筆者は日本プロ野球(NPB)の2500万人近い観客動員が熱心なコア層のリピーターによってつくられた数字であり、ライトなファン層はテレビ視聴率の低落、地上波全国中継そのものの激減からもわかるように、大幅に減少していることを紹介した。

実は「野球の競技人口」も「野球ファン」と同じ状況なのだ。本格的に野球をやりたいコアな競技人口は減少していない。が、ライトな競技者は減少の一途をたどっている。

もう少し具体的にすると、小中学校から高校野球、そして可能ならば大学、プロと優れた競技者の道に進もうとする「コア層」の子どもが多く集まる「硬式野球」と、そこまでではないが好きなスポーツを楽しみたくて競技に参加する「ライト層」の子どもが多い「軟式野球」とでは、状況が大きく異なっている。

競技人口においてもコア化が進み、ライト層を含む全体のすそ野は縮小している実情があるのだ。硬球と軟球、使うボールが違う「2つの野球」は現在、ほとんど別世界の様相を呈している。

「硬式野球」と「軟式野球」で大違いの現状

まずは軟式野球から見ていこう。地域の少年スポーツを統括するスポーツ少年団の調査では、小学校の男子軟式野球部員は2007年の17.1万人から2016年は11.5万人に33%減少。スポーツ少年団全体が縮小傾向の中、サッカーは24%減少にとどまり、競技人口でもサッカーが軟式野球を上回っている。

中学校の体育系の部活を統括する中体連(日本中学校体育連盟)の調査によると、軟球でプレーする男子軟式野球部の加盟生徒数は、2007年には30.5万人だったが2016年には18.5万人に。この10年で実に4割弱も減っている。少子化によって中体連に加盟する男子生徒数もこの間、8.8%ほど減少したが、それどころはない激減ぶりだ。サッカーは2007年は22.5万人、2016年は22.8万人で、大健闘の横ばい。ここでもやはりサッカーの競技人口が野球を逆転している。

軟式の少年野球では「チームが成り立たない」「解散の危機」という悲鳴が上がる地域もある。筆者はこの4、5月に高知県の少年野球の現場を取材した。人口減少が著しい県内の過疎地では少年野球人口は激減し、多くが他地区との合同チームになっていた。中には数十キロも離れた地区同士でチームを組んでいる場合もあった。もちろん、男子だけでなく、女子もチームに加わっていて、そのような状況だ。

では、硬式野球はどうだろうか。あと1カ月もすると高校野球「夏の甲子園」出場を目指して県大会が始まる。開会を今か今かと待ちわびて居るファンも多いだろう。夏の甲子園大会を主催する日本高校野球連盟(高野連)が発表する硬式野球部員数の推移は、2007年から2016年まで、おおむね16万人台後半でほぼ横ばい。少子化が進む中で、部員数は減少していないことになる。

しかし、この数字に関しては、高校野球関係者の中に「部員数が横ばいというのは、本当なのか。肌感覚と違う」という声を上げる人が見られたのも事実である。部員の中にマネージャーなどの女子部員や、試合の時だけよその部から駆り出される「臨時部員」も含まれているのではないか、という疑問もあった。

今年になって高野連の八田英二会長は、京都新聞の取材に応えて、この数字に1割弱の女子部員が含まれていることを認めた。高野連は女子部員に大会への参加資格を認めていない。このため、女子部員は「選手」にあたらず、競技人口に入らないという考え方もできるだろう。高野連の発表する硬式野球部員数のうち、「選手」としてプレーする可能性があるのは15万人台後半ということになる。

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