ただ、繰り返しですが、無限に残業代を出したとしても長時間労働により体調を崩しては意味がありません。労働時間の問題は①残業代未払いの問題、②長時間労働による健康被害やワークライフバランスが失われる点、に分けて論じるべきであり、②のほうがより重要性が高い問題であると筆者は考えています。もちろん、①すらできていない中小企業が多くあり、これも問題であることは認識しています。
確かに、個人の生産性は上げたいのですが、それが結果としてうまくいかないとしても、現在の労働法では「対価に見合わないから」という理由で解雇をすることは、まず認められません。判例でも「成績が下位10パーセント」というだけでは、教育指導が足りないとして、解雇が無効とされた例もあります。実際に解雇を有効とするためには、注意指導を繰り返してもなお、会社に重大な損害を与える、あるいは与えるおそれがあるということを立証する必要があり、「対価には見合わないけれども、平均的な仕事は普通にやる」人を解雇することは相当困難です。もちろん、残業をさせて残業代を払わない、というのは理にかないませんし、そのような企業姿勢は認められるべきではありません。
すべての労働者の残業代が単純に時間給でいいのか?
報酬を時間給で考えることに対する疑問の声もありました。
収入を増やしたいなら、給料の単価を上げるしかない。
輩や、「生活のために長く働く」という貧乏暇なし状態の輩が生まれる。
今でも、想像以上に多くの方が、このような感覚をお持ちだと思います。実際に、法律もそのような考え方を助長してしまっている面があります。
今の労働法における割増賃金は、基本的に工場労働者を前提に考えられています。したがって、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えると、1分単位で割増賃金が発生します。工場であれば、実際に働いた分生産できるわけですから、目に見えて成果が変わってきます。
しかし、ホワイトカラーの場合はどうでしょうか。5分、10分多く考えたからといっていい企画が出てくるわけではありません。工場労働者にとっては、今でもなお意味のある規制だと思いますが、すべての労働者に一律に当てはめるべきなのでしょうか。今後国会で議論される「高度プロフェッショナル制度」というのは、まさにこの疑問に答えるもので、一定の年収かつ業務内容の人については、残業代を払わないとする法改正案です。
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