残業は「時間制限」だけしても何も解決しない 読者からの「本音コメント」に弁護士が答える

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これが適用される例がそれほど拡大するとは思えませんが、すべての労働者の残業代が単純に時間給でいいのかという問題は、ホワイトカラー労働者が増えている以上、当然生じるでしょう。現時点の法律は工場労働者を前提とした時給制の残業代となっていますが、今後は会社とともに、労働者の意識も変わる必要があると思います。

サービス残業を強要することは、あってはならない

そして、少なからずあったのが、残業代も支払われないサービス残業を強いられている方の声です。

残業代は給与に3万円分含まれており、それ以上出ない。
1円も出ない会社よりマシだとは思うが、それを餌にされ毎月100時間近く残業する日々をもう4年も続けている。
まともな残業代が出て、生活残業なんて優雅な事が言える会社の人がうらやましいな、と思う。
早く帰りたい。

 

そのような会社は本来淘汰されるべきかと思います。しかし、これも現実によくある話です。日本の労働法は、正直言ってダブルスタンダードになっていると思います。大企業と中小零細ではコンプライアンスの実態に相当程度差があります。日本はまだまだ弁護士や裁判のハードルが高いのでこのような現実があっても訴える人は少ないのが現状でしょう。

しかし、労働法をちゃんと守っている企業が損をすることはあってはなりません。どのような法律を設計するかも大事ですが、法律をどのように遵守させる(取り締まる)のかという議論も大事ですね。

残業代も出ないサービス残業を強要することは、あってはならないことです。さらに、たとえ残業代が出ても、精神や健康を害するものは、当然認められません。しかし、働くこと自体を「単なる苦役」ととらえ、とにかく労働時間規制だけをすることもナンセンスでしょう。真の意味で成長を求め、将来にわたって社会の中で自分の価値を出して貢献することにより、自己実現していきたいという人の機会を奪うことはあってはなりません。ただ、それが真に自分の意思で納得して行われていることが、とても重要になります。

労働者のスタイルも、規制の中で守られながら「ワークライフバランス」を優先し、定時の仕事にこだわる方と、働くこと自体を生きることととらえ、主体性をより追求していく方と、二分化するかもしれませんし、この二分化自体が本当に正しいのかという見方もあります。

つまり、本当にワークライフバランスを追求したいのであれば、企業に対して交渉力を有する程のプロフェッショナルになる必要があるという点です。そうすると、一定期間はがむしゃらに働くことが必要ではないか?という根本的疑問があります。

「働く」ということは個人の価値観が大いに反映されるものです。働き方改革とは、その前提にある、個人の「生き方」を尊重するということだと筆者は考えています。企業だけでなく、すべての働く人が、「働く」ことの意味を改めて考えるきっかけになれば、「この記事を書いてよかった」と思います。

倉重 公太朗 倉重・近衛・森田法律事務所 代表弁護士

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くらしげ こうたろう / Kotaro Kurashige

慶應義塾大学経済学部卒。第一東京弁護士会労働法制委員会 外国法部会副部会長。日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員。日本CSR普及協会雇用労働専門委員。労働審判・仮処分・労働訴訟の係争案件対応、団体交渉(組合・労働委員会対応)、労災対応(行政・被災者対応)を得意分野とする。企業内セミナー、経営者向けセミナー、社会保険労務士向けセミナーを多数開催。著作は20冊を超えるが、代表作は『企業労働法実務入門』(日本リーダーズ協会 編集代表)、『なぜ景気が回復しても給料は上がらないのか(労働調査会 著者代表)。

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