野村HD、名も実も狙う20年ぶりの営業改革 各支店に権限委譲、高いハードルはそのまま

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山口氏は「日本の個人金融資産に占める有価証券の割合が、欧州並みの30%になれば、有価証券の額は現在よりも250兆円増える。野村のシェアが一定であれば、40兆円の資金流入が可能」とする。だが、「貯蓄から投資へ」のスローガンの下、数年にわたってNISAなどさまざまな投資促進策が講じられてきたにもかかわらず、日本の個人金融資産に占める有価証券の割合は変わっていない。19兆円のハードルは高いと考えざるをえない。

ボトムアップ営業でも経営目標数値は変えず

ストック収入についても、ハードルの高さは同様だ。株価上昇の追い風が吹いた2014年3月期からの2年間で539億円から765億円まで増えたものの、2017年3月期は737億円と頭打ちになった。3年間で倍増させる計画は困難を極めそうだ。

仮にストック収入で1500億円を達成できたとしても、増収幅は約750億円。税引き前利益を足元の748億円から2000億円に増やすには力不足だ。となれば、ストック以外、つまり取引ごとにチャージが発生する日本株の売買や外国株の取引、投資信託や債券の販売時の手数料収入を増やす必要がある。ただし前述のように、金融庁がFDの徹底を求める中で、こうした収益を伸ばすのは簡単なことではない。

計画値のハードルの高さを指摘された山口氏は、「目標を達成することは大事だが、目標を達成できても、事業環境が変わる中ではプロセスと中身を変えていかないと、次につながらない。プロセスを踏んでいかないと、顧客の信頼は獲得できない」と答えた。目標達成よりもプロセスのほうを重視している、とも取れる。

金融庁が主導する形で事業環境が大きく変化する中、営業体制を20年ぶりに刷新し、ボトムアップ型に切り替えた。その一方で、経営目標は2014年8月にトップダウンで設定した長期ビジョンの計画数値を据え置いた。この判断はいかなる着地に至るのか。その道のりが平坦でないことだけは確かだ。

猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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