野村HD、名も実も狙う20年ぶりの営業改革 各支店に権限委譲、高いハードルはそのまま

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FDとは、一言でいえば、顧客本位の業務運営を指す。金融庁は今年3月に策定した「顧客本位の業務運営に関する原則」で、グループ内取引を含む利益相反リスクの管理と開示や、手数料等の明確化、顧客に適合する商品の提供などを求めた。

4月には、同庁の森信親長官が日本証券アナリスト協会のセミナーで講演。「来年1月から始まる積み立てNISA(少額投資非課税制度)の対象となりうる投資信託は、現在日本で販売されている5406本のうち50本弱しかない」「日本株アクティブファンドの過去10年の平均リターンは年率1.4%(信託報酬控除後)で、日経平均株価の上昇率3%を下回る」などと、業界の課題を指摘した。

こうした金融庁の直近の動きが証券大手2社の営業体制刷新に影響を与えたかというと、スケジュールの点からは考えにくい。ただ、3年前から続く金融庁のFD徹底の姿勢が、顧客と最前線で接している営業店の権限を高める方針に傾かせたことは想像にかたくない。実際、今年の野村HDの経営説明資料には「お客様の信頼、満足度を高めることによって、ビジネスを拡大する」「低リスク商品の販売を強化」といった文言が躍る。

掛け声ばかりで進まない「貯蓄から投資へ」

ただ、FD重視の営業姿勢が即、収益の向上につながる保証はない。「従業員の研修や販売時の説明などに時間を要して、一時的に販売がスローダウンしたり、中長期での高マージン商品の販売や高齢顧客へのリスク商品販売が減少したりすることを通じ、短期的には手数料減収の圧力になる」(ドイツ証券の村木正雄アナリスト)との見方もある。

野村HDは長期ビジョンにおける営業部門の目標数値として、2017年3月期に748億円だった税引き前利益を3年後の2020年3月期に2000億円前後まで引き上げる計画を掲げている。その達成のための指標となるのが「顧客資産残高」と「ストック収入」だ。

前者は、野村HDが顧客から預かっているおカネや有価証券の合計額で、2017年3月末時点で107.7兆円。これを2020年3月末に150兆円まで増やす計画だ。後者は、投資信託の信託報酬など、顧客から預かった資産に関する継続的なサービスによる収入を指す。2017年3月期は737億円だったが、これを3年後に1500億円程度まで増やすとしている。

顧客資産残高については、今年4月から3年間で42兆円強増やす計画となるが、そのうち約23兆円が市場の動きによるもの。しかも、その前提は日経平均が2万5000円、為替が1ドル=115円になるというもので、現状の株価水準に比べると、かなりの開きがある。市場要因を除いた部分(約19兆円)が新規の資金流入によるものという想定だが、これは準大手証券会社4〜5社分の預かり資産に相当する額だ。

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