野村HD、名も実も狙う20年ぶりの営業改革 各支店に権限委譲、高いハードルはそのまま

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野村が営業体制を刷新するのは実に20年ぶり(写真:尾形文繁)

「顧客への接触時間がまだまだ足りていない。お客様に最高の付加価値を提供できるよう、役員を含む部門全体で営業店をサポートしていく」(野村ホールディングスの山口英一郎・営業部門長)

野村ホールディングス(HD)が毎年春に開催している機関投資家向けの経営説明会。昨年は欧米におけるリストラに関する説明に多くの時間が割かれたが、5月26日に開催された今年のミーティングでは、50分強に及んだ会社側の説明のうち、過半が山口氏が統括する国内営業に関するものに費やされた。

同社は20年ぶりに国内の営業体制を刷新する。これまでは本部からトップダウンで営業目標が設定され、各支店がその目標の達成に邁進するというのが野村のスタイルだった。役員も地区別に配置され、時に大口顧客への営業に同行し、地区単位で成績を競ってきた。

これを今年4月から、各支店に権限のかなりの部分を委譲、役員も地区別ではなく、顧客セグメントごとに再配置し、個人投資家や事業法人など、それぞれのセグメントで需要を深掘りする方針に改めた。

野村HDが傘下の28店舗、約2000人を対象に実施した業務量調査では、平均的な営業担当者の1日の業務時間のうち、顧客との接触に充てられたのは30%止まりだった。「圧倒的に外交量が足りていない。(業務時間に占める顧客接触の割合を)5割程度まで引き上げて、訪問頻度を上げていかないといけない。体制も変更し、最前線でお客様の変化を感じ取っている支店に権限を委譲した」(山口氏)。

金融庁が旗を振る「顧客本位の業務運営」

こうした営業体制の刷新に踏み切ったのは野村HDだけではない。国内2番手の大和証券も、同じく今年4月から同様の体制変更に踏み出した。

「全体の予算があるので、収支予算や資産導入額、安定収益については目標を設定しているが、どのように達成するかは支店の裁量に任せている」(中田誠司社長)。毎月の個別商品の販売目標を、トップダウンではなく、現場である営業店が設定するように改めたところ、4月下旬には外国株の提案営業をテコに、新規口座の開設数が伸びたという。

それにしても、なぜ大手2社が同じ時期に同様の改革に乗り出したのか。大きな要因として考えられるのが、金融庁が3年前から進めているフィデューシャリー・デューティー(受託者責任、以下FD)の徹底だ。

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