「夜型人間」だから蓄えられる種類の知識ある 朝より夜に向く知的な取り組みとは

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──知的生産のために、夜すべきことの柱は、やはり読書ですか?

夜は深い洞察に向いている。質の高いアウトプットには知識や教養という燃料が必要。邪魔が入らず、自由に使える夜に本を読まないのはもったいない。読書は頭の容量を広げ、頭の中を耕す作業。豊かな作物が育つ土壌で、本を読めば読むほど教養が育ちます。プラトン、デカルト、ニーチェなどの哲学書も、偉人が自分に語ってくれていると思って臨むと親近感が持てる。ロマン・ロラン、ドストエフスキーなどの大著も、昼間細切れで読むより、しみ込んでくる感覚を味わえます。

私は読書を情報系と人格系の2種類に分けています。新書や新聞、解説書などの情報系は、速読でザックリ読み飛ばし内容を要約してつかめばいい。一方、古典や長編小説など心や情緒に訴えかけ人格的な影響を与える本は、速度を緩めてじっくり味わいたいですね。モーツァルトやラフマニノフを3倍速で聴かないのと同じ。私は『論語』などは2年かけて1冊読むような読み方をします。

縛りから解き放たれた夜にある開放感

──夜は幻想や妄想が自由に羽ばたく時間でもありますね。

齋藤孝(さいとう たかし)/1960年生まれ。東京大学法学部卒業、同大学院教育学研究科博士課程等を経て現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。日本語ブームを作った『声に出して読みたい日本語』ほか『身体感覚を取り戻す』『語彙力こそが教養である』等著書多数(撮影:尾形文繁)

ルーチンワークより新しいアイデアを出すことが大事な時代です。アイデアとは想像力。想像力の翼が羽ばたきやすい環境ってあると思う。その条件は制約が少ないこと。それと目的が明確でない、評価も関係ないことだと思うんですね。そんな縛りから解き放たれた夜は開放感がある。これは現実的じゃないとか、前例がないから無理とか、昼間考えがちな枠組みを取り外して考えやすい。

あるテレビ番組で本会議後の2次会を十数年やっているのですが、その飲み会ではアイデアがすごく膨らみます。ノリでテキトーな発言が飛び交ううちに、それが本当に実現したり。本会議での抑制から解き放たれて引き出せるのが“夜会議”のよさですね。

──頭の冴えた昼とは別次元のアイデアが夜には出てくる?

発想とは何かと何かの組み合わせですが、昼ではつながらないものが夜はつながっていくのが、夜の知的生産の喜びでもある。私はテレビがすごく好きなんです(笑)。録画し1.5倍速で見ることが多いのですが、テレビに突っ込みを入れているとアイデアが湧いてくる。自分の中だけで二つをつなげるのでなく、外から刺激を受けるとインスピレーションが生まれる。

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