チャンギをも越える急膨張するアラブの巨艦 《対決!世界の大空港2》ドバイ
空港の利用者は、2000年を境に急上昇。04年には年間旅客数が2000万人を突破し、06年には2800万人超となった。10年には6000万人超の利用者が見込まれるなど、その勢いはとどまるところを知らない。
だが、成長の速度があまりに速く、至る所でひずみも出ている。空港内の通路には人があふれ、レストランなども、ファースト・ビジネスクラス客向けのラウンジ以外はいつも込み合っている。通路で寝転がっている客も多い。ドバイ市内から車で10~20分ほどという便利な場所にあるドバイ空港だが、現在の空港の規模では手に負えないほどの人々が押し寄せていることがわかる。
空港サイドも混雑解消と将来の需要拡大をにらみ、すでに能力拡張に動き出している。現在、ターミナル1に連結する形でターミナル3を増設中で、今年中には供用開始となる見通し。エアバスの最新鋭ジャンボA380を大量発注したエミレーツに合わせ、新ターミナルにはA380用のボーディングブリッジも多数設置される予定だ。
それだけではない。ドバイ政府は、なんと世界最大規模を誇る新空港の建設にも着手しているのだ。
現在の空港から約40キロメートルほど離れたジュベル・アリ地区。この砂漠のど真ん中で約82億ドル(約8400億円)のプロジェクト、「ドバイ・ワールド・セントラル」が進行中で、ここに現空港の10倍の広さを持ち、4500メートルの平行滑走路を6本(! )備えた巨大空港を建設しようというのだ。空港を含む140平方キロメートルの敷地に一大物流基地が造られ、近くの湾港とは高速道路で結ばれる。計画どおりに事が運べば、数年後には成田空港の4倍弱、年間1億2000万人もの旅客数に対応可能な超巨大空港が誕生する。
オイルマネーに潤う資源国ドバイ。いったい何が、そのドバイをここまで巨大な空港建設に駆り立てるのか。
それは、「石油はいつか枯渇する」という危機意識だ。ドバイは周辺諸国に比べて、石油埋蔵量が少なく、早くから「脱石油」を掲げてきた。外資に広く開放した経済特区などを設置しては、世界中から企業を呼び込み、中東一の金融街も誕生させた。10年には石油依存度をゼロ%にすることがドバイ政府の目標だ。少ない資源を原動力に成長を遂げていく姿には、「中東のシンガポール」との異名もついた。
建設ラッシュに沸くドバイ市内では、世界一の超高層ビル「ブルジュ・ドバイ」を中心に、次々と新しい都市が造られていく。海岸に目を向ければ、椰子の木をかたどった人工島がウォーターフロントに妖しい彩りを与える。
空港だけでなく、街全体が巨大なゲートウェイ--それがドバイの姿なのだ。
(週刊東洋経済)
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