それでも繰り返される「組体操事故」の実態

やむなく裁判に至った親子が訴えたいこと

倒立の練習中に転倒、日常生活に支障をきたす障害が残ったとして、定松佳輝さん・啓子さん夫妻と、当時小学6年だった東京都世田谷区の中学3年の次男(14)が、区と当時担任だった男性教諭に計約2000万円の損害賠償を求めている訴訟で、4月25日に第1回口頭弁論が東京地裁で開かれた。

記者会見する定松佳輝さん・啓子さん夫妻

訴状によると、次男は2014年4月、世田谷区立小学校の体育館で2人1組の補助付きで倒立をした際に転倒し、後頭部や背中を強打した。

直後から激しい頭痛やめまいなどに襲われるようになり脳脊髄液減少症と診断された。頭部への強い衝撃により脊髄を守る膜が傷つき、髄液が漏れてしまうもの。現在も激しい頭痛や倦怠感が残り、日常生活に支障が出ているという。

次男は事故当時、耳の病気のため回転運動が難しくマット運動等を禁じる診断書を提出していた。加えて、担任は床にマットを敷くなどの安全措置を講じておらず「事故後に状態を確認し保健室に連れて行くなど適切な対応も取らなかった」などと訴えている。

危険なのだという意識をもってほしい

前出の内田さんは言う。

「組体操指導の専門家に言わせると、最初は(体をうまく動かす準備段階として)いすの昇り降りからやらなくてはいけないと聞く。今はそのように手順を踏んでやらないうえに、先輩教員に丁寧に教えてもらえないから、ほとんどの教員が子どもたちに丁寧に教えられない。事故が起きた世田谷区の小学校も学校自体に経験が薄かったのではないか」

実は、その小学校では、定松さんの次男が事故に遭った年の3年前まで組体操を行っていない。それまでは代わりに「ソーラン節」を踊っていた。全員がそろいの法被を着て踊るソーラン節は保護者の間でも人気があったが、当時の校長の意見で組体操に変更されたようだ。この小学校に子どもを通わせていた会社員の女性は残念そうに話す。

「どうして組体操をやらせなくてはいけないのですか? と説明会で質問も出ましたが、校長先生が“組体操の良いところ”を解説して、終わってしまいました」

また、組体操は最上級生である6年生が取り組む場合が多いが、この学校は1学年で2クラスだったため、6年生と5年生の2学年で行うこともあったという。1学年下の5年生を加え、学校としてもまだ2回しか経験していない。在籍していた教諭らに安全管理面で十分に高い意識があったかどうかは判断しづらい。

推測の域を出ないが、組体操への変更を決めた校長にもその意識は薄かったのかもしれない。内田さんが初めて組体操の危険性を自身のブログで訴えたのは、この事故が起きた数週間後だった。

「もう少し早い時期に警鐘を鳴らせたらと思うと残念です。ただ、それが先生たちに届いたかどうか……。それから3年経っても、なかなか変わりませんから。保護者も先生たちも、組体操は慎重にやらなくてはいけない、危険なのだという意識をもってほしい。子どもたちがお互いを安全に保つためにやるのが組体操なのに、おかしな方向に暴走し続けている」(内田さん)

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