最近では米NYタイムズ紙やワシントンポスト紙を中心にさまざまな報道が相次ぎ、情報合戦の様相を呈している。市場参加者は、これらの報道や情報端末のヘッドラインについつい振り回されそうになるが、ここはいったん冷静に問題を整理する必要がありそうだ。
今後疑惑が解明されるに従い、注目すべきポイントは主に3つに絞られていくだろう。
第1に、「ロシアゲート疑惑」そのものの真相と、その後の司法や議会の動向だ。米司法省は5月17日、本件を巡るFBIの捜査を監督する特別検察官に、ロバート・モラー元FBI長官を指名すると発表した。特別検察官は、必要と判断すれば連邦犯罪として訴追するなどの強力な権限を持つ。特別検察官の助言で下院が弾劾を発議する可能性もゼロではない。
第2に、ロシアへの機密情報漏えい疑惑が挙げられる。トランプ大統領が5月10日にホワイトハウスでロシアのラブロフ外相や駐米大使と会談した際、過激派組織ISに関する機密性の高い情報を漏らしたとの報道があった。本件は、大統領の権限が認められる範囲であれば違法性はないとの見方もあるが、もし事実となればメディアや世論からの厳しい攻撃は避けられないだろう。
ドル円や株に重しとなる状態が続く
第3に、前述した「コミー・メモ」の真偽である。これはトランプ大統領が今年2月コミー氏に、当時の側近のフリン前大統領補佐官に対する捜査を中止するように要請していたことが、コミー氏の当時のメモに書き残されていた件である。そもそもトランプ大統領と二人きりになったときに言われたことを、言われたコミー氏本人が書き残しているのだから、どの程度証拠として有効なのかはわからない。
ただ、米国の法律専門家のコメントによれば、もし捜査の中止を要請したことが事実なら司法妨害に当たり、「弾劾すべき犯罪(impeachable offense)」に該当するという。加えてチェイフェッツ米下院監視委員長が17日、「コミー氏の公聴会を来週にも計画している」と発言。市場参加者は、本件がトランプ大統領の弾劾につながるかもしれないというリスクと、これまでトランプ大統領との会話について口を閉ざしていたコミー前長官が公聴会で語り、何か新しい問題が露呈するのではないかというリスクを織り込みはじめたようだ。これこそが「コミー・メモ」をきっかけに市場が揺れた背景であろう。
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