日本の経常収支には構造変化が起きている モノではなくカネで稼ぐ構造に
米国の通商政策を担うUSTR(通商代表部)の代表に、強気の交渉姿勢で知られる弁護士のロバート・ライトハイザー氏が就任することになった。日本の対米貿易黒字は再び拡大しており、米国が日本に対して今後どのような要求を突き付けてくるのか、気になるところだ。
それと前後して、2016年度の国際収支統計が公表された。
東日本大震災後の2013年度に日本の貿易赤字は過去最大の11兆円まで拡大し、経常黒字は2.3兆円まで縮小した。しかし、その後貿易赤字が縮小し、さらに黒字転換するのに伴い、2016年度は20.1兆円の経常収支黒字を記録した。
貿易収支は黒字化、所得収支が増加
「そう遠くない時期に、日本は経常赤字国に転落するのではないか」
2011年の東日本大震災後の原子力発電所停止を受け、原油と天然ガスの輸入が急増した。貿易赤字の拡大と経常黒字の縮小が進行すると、こんな観測が盛んに喧伝された。2012年を境に円安が進行したにもかかわらず、エコノミストの予想に反して輸出がそれほど伸びなかったことも、日本が経常赤字国になるとの予測を裏づけるように思えた。
しかし、実際の数字を見るかぎり、その後の展開はこうした予想を裏切る形となっている。貿易黒字は2011年度から4年間赤字を続けたが、2015年度から黒字化している。
一方、直接投資や証券投資に伴う利子・配当収入である第1次所得収支はジリジリと黒字幅を拡大させている。2016年度は対前年度比で13.7%減少したものの、黒字額は18兆円に上る。訪日外国人観光客が増えたことを受け、サービス収支の赤字が徐々に縮小していることも特筆すべき点だ。
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