日本の経常収支には構造変化が起きている

モノではなくカネで稼ぐ構造に

経常収支赤字転落の予想が外れ、2016年度の経常黒字が拡大したのはなぜなのか。理由の1つは原油価格の下落で輸入額が減少したことだ。一方の輸出は半導体・電子部品が予想外に好調で、ピーク時ほど巨額ではないものの、2016年度の貿易黒字額を押し上げた。

みずほ証券の末廣徹シニアマーケットエコノミストは「予想外だったのは円安のときに増えなかった輸出が伸びていること。米国の自動車市場は飽和しているが、電子部品や半導体が昨年夏ごろから中国向けに増えてきた。ただ、このままのペースで伸びていくとは考えにくい」と解説する。

近年、高齢化によって家計貯蓄率が低下してきており、いわゆる「ISバランス」(国内の貯蓄・投資差額と財政収支の合計は経常収支に一致するという恒等式)からみて、いずれ経常収支も赤字に転落するとの予測もある。しかし、末廣氏は「企業部門の貯蓄超過も考えると、経常収支の黒字は相当続くのではないか」と予想する。

輸出数量が増えても製造業の雇用は増えず

ただ、「2016年度の輸入減少は原油価格の下落が大きく寄与しており、原油価格要因はいつかは止まる」(末廣氏)。さらに、輸出も力強く伸びているわけではない。輸出額も輸入額も、2年連続で減少している。

ここ数年、輸出額は70兆円前後で伸び悩んでいる。2016年度の貿易黒字が前年度比で拡大したのは、輸出額が増えたわけではなく、内需が弱く、輸入額が減ったためだ。あまり手放しで喜べる事態ではないわけだ。

末廣氏は「日本経済への恩恵という面でいうと、輸出数量が増えることが重要だが、国内生産が伸びているかというと横ばい。製造業の労働者も増えておらず、サービス業の労働者しか増えていない」と指摘する。

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