原発事故「避難勧奨地点」指定の理不尽 あいまいな賠償の基準、住民同士は口もきかぬ状態に

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1キログラム当たり17万ベクレルとは、土壌1平方メートル当たりに換算すると868万ベクレルに相当する。旧ソ連で住民の立ち入りが禁止されている「特別規制ゾーン」(148万ベクレル/平方メートル以上)を大きく上回る数値だ。こけの汚染レベルは土壌のそれをはるかに超えていた。自宅の敷地は除染が終わっているとはいうものの、佐竹さんは「危険きわまりない箇所が今も自宅敷地内に点在している」と不安を募らせている。

実は、佐竹さん宅を含む小国地区の128世帯は、昨年12月14日付けで国による「特定避難勧奨地点」の指定が解除されたばかりだった。年間の推定被曝線量が基準とされた20ミリシーベルトを下回ることが確実になったというのが理由だが、「安全宣言」を意味する指定の解除は一片の通知で済まされ、事前に説明会が開催されることもなかった。

佐竹さん一家は指定解除から3カ月が過ぎて賠償金の支払いが打ち切られた現在も、自宅に戻る決断ができないでいる。

避難生活を続ける理由について佐竹さんは、「子どもの生命を守るため」と言い切る。自宅には70歳の祖母だけが残り、佐竹さんと夫(43)、小学校4年生の長男(9)、小1の長女(6)、幼稚園児の二男(5)は、同じ市内でも空間線量が低い地区で不自由なアパート暮らしを2年近くも続けている。

「特定避難勧奨地点」は、放射線防護の観点から「避難することが望ましい」とされた地点だ。原発事故から1カ月後の11年4月、国は飯舘村に近接する霊山町小国地区についても、全住民に避難を求める計画的避難区域に指定することを検討したが、「面的な汚染レベルが基準を下回る」という判断から、同区域の指定を見送った。実際には、計画的避難による経営への打撃を恐れた農協などの意向をくみ取り、伊達市が国に指定回避を働き掛けたというのが真相だとされる。その代わりに適用されたのが、住戸(世帯)単位で指定する、特定避難勧奨地点だった。

国は11年6月に伊達市で勧奨地点を設定するのに際して、地上1メートルの空間線量が毎時3.2マイクロシーベルト以上(実際には誤差の可能性を考慮して3.1マイクロシーベルト以上)であることを条件とした。佐竹さん宅の庭先の線量は3.0マイクロシーベルトと基準を下回ったものの、3.2マイクロシーベルト以上が計測された民家の近隣に小学生以下の子どもや妊婦がいる場合に適用される基準により、勧奨地点に指定された。その結果、避難に際して東京電力からの1人当たり月10万円の慰謝料、税や国民健康保険料、医療費の免除、避難先の住居費などの支援を受けることになった。

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