原発事故「避難勧奨地点」指定の理不尽 あいまいな賠償の基準、住民同士は口もきかぬ状態に
伊達市の意向で解除?
「特定避難勧奨地点の指定は解除されたが、コミュニティ(を分断した)という点では、禍根を残した制度だった」
「当初から国とは考え方が違っており、われわれは(世帯単位ではなく)地域で指定してほしいと言ってきた。町内会コミュニティのまとまりを分断するような『地点での指定』はまずいと思った」
伊達市の仁志田昇司市長は、勧奨地点が解除された昨年12月14日の記者会見でこう語った。ただ、市長の発言は他人ごとのように聞こえる。というのも、指定解除に際して住民への説明が何もなく、その時点で除染は完了していなかったからだ。
そもそも仁志田市長は、勧奨地点が指定された当日の11年6月30日の会見で、「前日に市としての勧奨地点の考え方について改めて国に要望した結果、基本的な国の考えと市の考えは一致した」と語っていた。高濃度の放射性物質で汚染された地域でありながら、指定される世帯とされない世帯があることについて、「納得していただくしかない」とも記者会見で言い切っていた。
「当初から国とわれわれの考え方は違っていたというのは、後で取って付けた説明のように聞こえる」と、小国地区を地盤とする菅野喜明・伊達市議会議員は批判する。そして危惧された通り、勧奨地点の指定は「住民に亀裂をもたらし、地域のつながりをずたずたにしてしまった」(菅野議員)。
小学生の子どもがいるという理由で、庭先での測定値が毎時1.4マイクロシーベルトだったにもかかわらず、勧奨地点に指定された世帯がある一方で、3.1マイクロシーベルトにぎりぎり満たさなかったために指定されなかった世帯もあった。ある地区では10軒中6軒が指定された一方、4軒が指定から外れた。その結果、住民は賠償面などで著しい不公平感を抱くことになった。
勧奨地点に指定された5人家族の場合、東京電力から年間に支払われる慰謝料は年間600万円にのぼった。反面、指定されなかった場合は、大人1人当たり12万円、妊婦や子ども1人当たり60万円が支払われただけだった。
「勧奨地点に指定されて賠償金を得た人の中には自宅をリフォームしたり自家用車を買い替える人も出てきた」と小国地区の住民は語る。「月10万円の慰謝料や税、保険料などの減免を受け取りながら、避難せずに住み続けた人もいた」(別の住民)ともいう。このこと自体は責められることではないが、支援を受けられなかった住民は不満を抱いた。
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