原発事故「避難勧奨地点」指定の理不尽

あいまいな賠償の基準、住民同士は口もきかぬ状態に

「東京電力は原発事故を起こした11年3月11日から和解が成立する日まで、1人当たり月10万円の精神的慰謝料を支払え」

こうした内容の「裁判外紛争解決手続き」(ADR手続き)の請求が原子力損害賠償紛争解決センターに申し立てられたのは今年2月5日のことだ。申立人は、伊達市霊山町小国、石田坂ノ上、八木平、月舘町相葭地区で特定避難勧奨地点の指定を受けることができなかった324世帯991人だった(7月31日時点では330世帯、1007人)。この人数は、指定を受けられなかった地区住民の約9割にも相当する。「原発事故被災者支援弁護団」の丸山輝久団長は、「ADR手続きを通じて、伊達市での勧奨地点指定の非合理性・不平等性を明らかにしたい」と話している。

追加指定をめぐり、住民間に亀裂

下小国の稲場集落に自宅を持つ清野新三さん(63)もADR手続きに加わった。
 清野さん宅も勧奨地点から外れたが、「特に納得できなかったのは、指定後4カ月以上もたってから集落内で追加指定を受けた世帯があったことだ」(清野さん)。

清野新三さんの集落でも指定された世帯とされなかった世帯が混在する

「決め方がおかしい」と感じた清野さんらは市長宛てに質問書を提出した。市からは「放射線量調査の時点からすでに4カ月近くを経過しており、除染作業も進んでいる中での指定であることから、地域の皆様にとりましては理解しがたいことであると認識しています」との回答が来たが、「なぜ特定の住宅だけが追加指定を受けたかについては満足のいく説明はなかった」(清野さん)という。

こうした経緯からわだかまりを感じる住民は多く、「指定された人とは道ですれ違っても話をしなくなった」(清野さん)という。

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