原発事故「避難勧奨地点」指定の理不尽

あいまいな賠償の基準、住民同士は口もきかぬ状態に

対策を要求すると、モンスターペアレント扱いに

ただ、「指定されて良かったでは済まされなかった」と佐竹さんは語る。避難とともに、幼稚園教諭の仕事を辞めざるをえなくなり、当初はほかに手段がなかったために、今まで通わせていた小学校や幼稚園まで、子どもを自家用車で送り迎えしなければならなかった。

佐竹さんは放射線量が低く、安全な場所での生活を望んだが、長男は友人と別れるのをいやがり、転校を拒否した。そのため、高い線量を計測していた自宅近くの小学校に通わせざるをえなかった。

佐竹さんが子どもを通わせていた小国小学校では、12年7月にPTAや市民放射能測定所関係者によって学校の敷地内の放射線測定が実施されたが、佐竹さんらの要請にもかかわらず、学校側からその結果が公表されることはなかった。佐竹さんは校長に直談判したり、保護者にアンケートを取ったうえで学校にすみやかに対策を講じるように要望書を提出したが、「モンスターペアレントの扱いをされた」(佐竹さん)という。

小学校の敷地は比較的早く除染が実施されたものの、敷地周辺のあちこちに高線量の場所があった。原発事故から1年半が経った12年9月には、敷地付近の排水溝と側溝の砂の付近から「毎時197マイクロシーベルト」という高線量が計測されていたことが、除染が終わってからの学校による通知でわかった。

勧奨地点が解除された後も、新たに問題が発生した。

佐竹さんは子どもの通学に際して市からタクシー送迎の支援を受けていた。ところが、地域の除染が今年3月末までに完了することを理由に、タクシー送迎の打ち切りが通知されたのである。今年1月25日のことだった。

「それでは子どもを通わせ続けることができない」と考えた佐竹さん夫妻は、市の教育委員会に見直しを求めたが、「決定が覆ることはないの一点張り」(佐竹さん)。ところが3月18日になって、「13年度に限りタクシーによる通学支援を継続することといたしました」という通知文が教育委員会から送られてきた。

この時点で佐竹さんは長男および長女を別の小学校に通わせる手続きを終えていた。「タクシー支援があれば、娘さんは小国小に入学させますか」との教育委員会からの問い合わせに佐竹さんは絶句した。後になってわかったことだが、小国小では新入生がゼロになることが判明したことから、「教育委員会は慌ててタクシー支援の継続を決めることで、入学者ゼロを回避しようとしたのではないか」と佐竹さんは推測している。4月に小国小に入学した子どもは一人もいなかった。

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