サッカー弱小高が全国2冠王者に育ったワケ 柴崎岳を輩出した青森山田高校の育成哲学

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部員は全国各地から入学してきます。雪とは無縁の地域から来て、雪かきの経験がなかったり、スコップの握り方を知らない部員もたくさんいます。

普通であればこの雪をストレスに感じてしまう。確かに、最初は「自分はサッカーをするために青森山田に入学したのだ。こんな作業をするためではない」と、考える部員もいるでしょう。

しかし、彼らは次第に、雪国だというハンディキャップを嘆くのではなく、「雪国だからこそ、強くなれる」と考えを変えていってくれます。

雪中サッカーについて、もう少し詳しく説明しましょう。雪の中でいつもと同じようなサッカーをやるのではありません。50人対50人のチームに分けて、ボールも3個使い、2点を先に取ったチームが勝ちという練習です。部員たちは、ひざ、あるいは腰まで雪に埋まりながらボールを蹴り、走り続けます。負けたチームには、隣の野球場に積もった深い雪の中を400メートル走ってもらいます。

実際に雪の上を走ったことがある方ならわかると思いますが、全然うまく走れません。ですが、その分、足腰に大きな負荷がかかり、すばらしいトレーニングになるのです。

考え方1つで、「敵」は「味方」に変わる

こんな自然を生かしたトレーニングができるのは雪国だけ。ややもすると「敵」になってしまう雪を「味方」に変えてしまう。考え方1つの工夫で、それも十分に可能なことなのです。

16~18歳で体力が伸び盛りの彼らが、こうした日々を重ねて一冬を越えたとき、確実に成長が見られます。足腰が鍛えられ、いざ、ボールを蹴ってみれば一目瞭然。キック力が格段に上がっています。

つまり、どのような環境においても、頭を使った工夫次第で、忍耐力や判断力などを身につけることができます。あるいは、考え方次第では、厳しい環境であればあるほど、人は成長できるということだと思います。

取り巻く環境を、それが一見逆境に見えるものであっても最大限に生かしていく――。こういった考え方は、サッカーに限らず、社会人であっても必須だと言えるのではないでしょうか。

仕事内容、上司をはじめとする人間関係、社内における自分のポジションや評価など、今の環境が100%恵まれている、そう思える人などいないはずです。

しかし、仮にすべてに恵まれていると思える環境があったとしたら……。それははたして、本当に良い環境でしょうか? いえ、その人はきっと成長できないはずです。

青森山田高校サッカー部も、もし雪国でなければ、今のように強くなっていたかはわかりません。

厳しい環境をポジティブにとらえ、それと共存する。それだけでなく、利用しようと発想を転換することで、その環境でしか得られない力が身に付く。つまり、厳しい環境に身をおいたからこそ、技術はもちろん精神的にも大きく成長する。これは、20年以上にわたり、雪国の青森でサッカー部を指導して得た実感です。

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