ヤマト元社員が訴える「宅配現場」本当の疲弊 未払い残業代を払い値上げしても解決しない

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(4)ドライバーが未払い残業代よりほしかったもの

ヤマトという会社は昔から「世の中を味方につける」ことが抜群にうまい。宅急便の生みの親、小倉昌男元会長が旧郵政省(現・日本郵政グループ)との熾烈な競争をしていた頃からの伝統だ。

ヤマトが、約7万6000人の社員を対象に未払いの残業代を調べ、支給すべき未払い分をすべて支払う方針を固めたというニュースが世間をにぎわせた。

それに関連して、先日ヤマトが、荷物量の急増に対応できず、社員の長時間労働などを招いたことから、山内雅喜社長と木川眞会長、傘下の事業会社であるヤマト運輸の長尾裕社長、神田晴夫会長を処分する方針だというニュースが飛び込んできた。

「もうとてもやっていけないので、長年据え置いてきた料金も値上げさせてください。その分をドライバーの待遇改善に回したいのです」

「会社として現場の労働環境を良くしていこうと腹をくくりました」

称賛される声が聞かれたが、はたしてどうであろうか。今まで払っていなかった払われるべきものを払う、問題があったことを認めたにすぎない。「どうだ、すごいだろ」と胸を張って言えることではない。

ドライバーたちは、それで納得できるのであろうか。「当たり前だ」「もらえるものだからもらっておこう」としか思わないのが大半だ。働き方にはいろいろあると思う。給料をもらうためだけに仕事をするか、仕事に生きがいを感じその結果として対価を受け取るかだ。ヤマトのドライバーたちの多くは仕事の生きがいを大切にしている。私は、現場で多くのプロのドライバーたちと仕事を共にし、そう感じている。

今でも現場は変わっていない

会社はさまざまな発表をしているが、今も現場は変わっていない。変わる兆しもみえてこない。過去にも、クール宅急便問題、労働環境問題も、いく度となく出てきた。その都度、是正案はあったものの、結局は何も変わらなかった。そんな経緯もありドライバーたちは会社を信用していない。

なぜ、サービス残業をしてきたか。上司に命令され、仕方なくしたものもいるであろうが、ほとんどのものがお客の要望に応えるために、自ら進んでサービス残業をしたのだ。

もちろん、サービス残業は奨励されるものではないが、そのドライバーの献身があったからこそ、ヤマトの信頼、信用、そして魂は守られてきた。会社はそこを理解し、発言してほしい。社会に向けてではなく、社員に向けての発言がほしい。

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