ヤマト元社員が訴える「宅配現場」本当の疲弊 未払い残業代を払い値上げしても解決しない
あるドライバーがいう。「正直言って、未払い残業代なんて求めていなかった。無理して払って会社が傾くことがあっては元も子もない。それならば、今まではごめんなさい、次からはしっかりと守ります、でいいんだよね」。
私も、新たな勤務体制の確立、人員補充など、未来に投資したほうがドライバーは希望が持てるはずだと思う。過去の清算より未来の約束がほしい。それも目に見える数字の部分でなく、ドライバーの魂を突き動かすものがほしい。取り戻したいのはおカネではなく、会社の魂だ。
今後宅配システムを維持するため必要なこと
(5)「宅配方法の選択」を、消費者と一緒に考えたい
経済産業省によると、2016年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、15.1兆円(前年比9.8%増)まで拡大している。今後もネット通販は伸び続けるだろう。
宅配ボックスの普及がこの苦境打開の切り札になるかのような報道もされていたが、現在、宅配便の大半は水など「自分で運ぶのが大変な重いもの、大きいものを運んでもらう」であり、宅配ボックスには入らないことが多いため、残念ながら根本的な解決にはならないだろうと私は考えている。
この先、ヤマトの宅配システムを維持するためには、宅配業者だけではなく、私たち消費者側の意識の変革も必要になる。宅配便とは自宅や会社に届けるのが当たり前だった。その根本的なところを変えていかなければならないであろう。
今までネット通販の商品と運賃は同じものと捉えられてきたが、これからこの2つを別物として考えていったほうがいいかもしれない。つまり、営業所に届くまでがネット通販業者との契約であり、営業所から自宅までの配送は新たに宅配業者と消費者の契約とするのだ。あくまでも案のひとつにすぎないが、ドライバーの負担は減らせる。それにネット通販業者にとっては、今までの料金を維持でき、宅配業者も運賃を値上げすることなく、必要に応じて単価を上げて収益が得られる。
昨今、ヤマトが大変というニュースが増えたことで、大きな変化があった。宅急便を受け取るお客が「大変なんですって? 頑張ってくださいね」「再配達頼んじゃって、悪かったわね」とドライバーに声をかけることが多くなったというのだ。
少し前にヤマトはこんなテレビCMを流していた。
「場所に届けるんじゃない、人に届けるんだ!」
本来、そこにヤマトの真髄がある。
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