中国バブル崩壊は、レアメタル暴落が引き金に? シャドーバンキングと、レアメタルバブルは表裏一体

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さて、中国のシャドーバンキングとは、もともとは政府系銀行から出てきた資金が、裏の金融システムにまわり、信用度の低い投機市場にも供給されるメカニズムを指す。

例えば、中国の不動産バブルの懸念から行き先を失った資金は、信用度の低い企業や地方政府などに「また貸し」をするケースが典型例である。これらの資金がさらに過剰な投機を引き起こしている。まさに一部はレアメタル向けの投機資金に回っているのだ。

世界市場下落のなか、中国だけが上昇する異常事態

実は、ここ数年で、中国では相次いで金属取引所が設立された。雲南省の昆明、広西の南寧、天津の三か所にレアメタル取引所が設立された。同様に、錫については湖南省の永興県の湖南南方レアメタル取引所が、という具合に次々に設立されたのである。更にレアアースでは江西省の贛州市のレアアース取引所が計画されており、新たに包頭でも近々取引所がオープンするとも噂されている。

常識で考えればこんなに多くのレアメタルの取引所を設立させる必然性はない。だが中央政府としては特定の省だけに認可を下すのも不公平であり、地方の省同士の競争原理を期待して認可を出した。逆に裏読みをすれば、その認可権を地方政府に与えることで、中央政府の影響力を維持したり、特定の省庁の賄賂の温床になっている可能性がある、ということだ。

雲南省のレアメタル取引所大株主は、国営航空会社!

これらのレアメタル取引所そのものや、投機に走る成金投資企業、成金ファンドや成金投機筋の実態はどうなっているのか。それぞれの地域では、特徴のあるレアメタルを取り扱っているが、その中でも異彩を放つのが、雲南省の泛亜有色金属取引所である。中国初の非鉄金属電子現物取引所であり、主要株主は何と、レアメタルにはまったく関係のない雲南航空公司(国営)と複数の地場の企業である。

仕組みはこうだ。この取引所の株主になると、会員としてレアメタルの金融取引ができるが、現在500万元=約8000万円の保証金で6~7企業が参加しているという。驚くのは、金属取引所としてすでにインジウムの在庫を99.995%の規格品で1260トンを備蓄していることだ。ガリウムも36.86トンの在庫を持っている。

どこが驚くことなのか。中国のインジウムの生産量はせいぜい350トン。対して世界の消費量はせいぜい年間1200トンだから、世界の年間消費量以上の備蓄であり、中国の生産量のなんと約4倍の備蓄をしているわけだ。

一方、ガリウムの世界市場もわずか200トン。ということは、世界市場の約2割の在庫を持っていることになる(ただし、インジウムもガリウムもリサイクル市場を含む市場規模だから、その回収分を差し引くと、もっととんでもない備蓄量だ)。誰が何の目的でこんな取引所の権限と杜撰なルールを認めたのかはわからない。だが「これが中国のレアメタル取引だ」といえば、それまでである。

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