海外に行かずに外国語を習得した人の「習慣」 純ジャパニーズ×英語ネーティブの日米対談

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上乃:ファクラーさんは、難しい漢字をよく知ってますよね。練習している姿をよく見かけました。しかも、私が知らない難しい漢字で(笑)。ファクラーさんのノートをちらっと見たことがあるんだけど、漢字がたくさん書きつけてあって、フリガナまでつけてあった。本当にすごい。自分の興味のあるところ、知りたいと思うことを掘り下げていく姿勢は、英語を勉強する際にも欠かせませんね。

未知の世界に足を踏み入れるための最高のツール

『純ジャパニーズの迷わない英語勉強法 (実用外国語)』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ファクラー:よく言われますけど、外国語って、自分の視野を確実に広げてくれるんですよ。

たとえばね、中国語ができるようになってから、僕の中には「幽霊」という概念がはっきりと芽生えるようになった(笑)。アメリカで英語だけ使って暮らしていると、幽霊なんて概念に触れることはほとんどないんだけど、台湾に住んだら、幽霊の話をする人が多くてね。しょっちゅう中国語で聞かされているうちに、幽霊という概念を認知するようになったんです。

外国語ができると、新たな概念も広がるんだよね。それまで想像すらしなかった世界に導いてくれるのが外国語と言っていい。

実際に、台湾や中国、日本の田舎に1人で取材に行って、直接、そこに住む人々と話ができるという体験もできたしね。

コミュニケーションのツールを手に入れて、まったく異なる世界に足を踏み入れて、視野を広げてみることができる。そして、新たな価値観に論理的にアプローチし、その違いを許容できるようになる。その結果、たまにアメリカに帰って「アメリカ」という尺度しか持っていない人と話すと、違和感を覚えますね。僕はもう、ひとつの尺度しか存在しない生活には戻れないでしょうね。

上乃:私はいわゆる「純ジャパ」で、外国で暮らしたことはないけど、それはよくわかる。外の世界に身を置いて、視野が広がると、元の世界には戻れないって言いますよね。外国じゃないけど、私も田舎に帰ると窮屈な思いをすることがあります。

さらに、日本を訪れる外国人も急増中なので、英語を使う場面もたくさんある。そうなると、仕事で使うチャンスもあるし、仕事以外でも、外国の人に会って英語を使うことが増えていますよね。日本国内での英語の需要が高まっているのを日々感じます。

ファクラーさんは、 自国の外に出て外国語を習得したけど、私の場合は、国内で外国語を習得して、来日する人たちと接したり、日本にいながらにして外国の情報を取り込んで、世界を広げていきました。

日本にいたとしても、外国の情報を入手したい、日本の誇るべき文化や価値観などの独自のコンテンツを発信したいという意欲を持っている人は本当に多い。そこで課題となるのは、その必須ツールである語学力なんですよね。

(後編に続く)

(撮影:佐藤克秋)

上乃 久子 ニューヨークタイムズ取材記者

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うえの ひさこ / Hisako Ueno

1971年岡山県生まれ。1994年に四国学院大学文学部英文科卒業後、同大学の事務助手として勤務。東京都内のバイリンガル雑誌社、翻訳会社、ロサンゼルスタイムズ東京支局、国際協力機構(JICA)を経て、現在、ニューヨークタイムズ東京支局に取材記者として活躍。サイマル・アカデミー同時通訳科修了。著書に『純ジャパニーズの迷わない英語勉強法』(小学館)。

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マーティン・ファクラー ジャーナリスト

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Martin Fackler

1966年、アメリカ合衆国アイオワ州生まれ。イリノイ大学でジャーナリズムの修士号を、カリフォルニア大学バークレー校で歴史学の修士号(現代東アジア史専攻)を取得した後、1996年からブルームバーグ、AP通信社で記者として活躍。2005年からニューヨークタイムズ東京支局記者、2009年、支局長に就任する。2015年8月から現職。著書に『フェイクニュース時代を生き抜く データ・リテラシー 』(光文社新書)『吠えない犬 安倍政権7年8カ月とメディア・コントロール』(双葉社)など

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