最初は小さな模型飛行機でテストし、次に2分の1サイズのラジコンを作った。小型飛行機を作れそうな人をネットで探し、人が乗る機体の設計と製造はオリンポスという会社の四戸哲さんにお願いした。
2006年にエンジンのないグライダータイプのM-02が完成。その年から北海道や富士山麓でテスト飛行を行った。初めてフワッと浮いたときの八谷さんの感想は、「うわっ、ジブリアニメみたい!」。最高で高度25メートルまで上昇した。「航空力学上、ちゃんど飛ぶことが立証できました」。テスト飛行のときはボランティアスタッフや観客が手伝った。
そしていよいよジェットエンジンをつけたM-02Jが誕生する。
その一方で、八谷さんは空を飛ぶために体を鍛えていた。「ハングライダーみたいに体でコントロールするので、空中で重心を細かく制御する必要があるんです。訓練が必要でした」。ブラジルのダンスのような格闘技「カポエラ」を習い、ハンググライダーやエンジンのついた「トライク」でも飛行練習をした。
絶望的になった事件
ところで、気になるのは資金だ。航空機の開発というと莫大なおカネがかかりそうだが、自分が乗るための小さな飛行機なら、少ない資金でもできるという。八谷さんはメールソフト「ポストペット」の生みの親であり、ペットワークスという会社の経営者でもある。そこで会社の研究開発としてこのプロジェクトに取り組んだ。
10年間にかかった費用は約9500万円だ。制作した模型や飛行機を展覧会に貸し出すレンタル料や、1機を作品として美術館に売った収入などがあり、現在は2500万円ほどの赤字。それでも十分な成果はあった。
とはいえ、10年の間には絶望的になったこともある。2010年にジェットエンジンを搭載したM-02Jの初めての本格的な滑走テストをしたとき、肝心のエンジンが故障した。2004年に380万円をはたいて買ったフランス製のエンジンだった。直そうとしてメーカーに問い合わせると、メーカーは倒産していた。
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