「信頼され続けるメディア」は何が違うのか エコノミスト誌が174年間堅持していること
フランクリン:日本だけではなく、ほとんどの国においてメディアというものは特定の政党と近い関係にあるものだと思います。
それに対し、『エコノミスト』の場合、特定の政党の主張とは関係なく、自分たちの意見を強く言うという特徴があります。そのため、われわれの主張は、時として非常に混乱しているかのようにみえると思います。
なぜならば、経済の問題に関しては中道右派的な主張をしておきながら、所得格差などの社会問題に関しては左派に近い革新的な主張をする、といったことが頻繁にあります。つまり必ずしも既存の政党の主張に合致しているわけではないのです。
メディアにとって創刊時の歴史は重要
山田:なるほど。実は週刊東洋経済は1895年に『エコノミスト』をお手本にして創刊しており、それは題字にも表れています。東洋はオリエンタル、経済はエコノミストという意味です。
東洋経済には有名な先輩として首相も務めた石橋湛山がおります。石橋をはじめとする東洋経済のジャーナリストたちは戦前のある時期に「小日本主義」を主張していた。全ての植民地を放棄し貿易立国に転じるべきだ、と。植民地経営がいかに不採算事業であるか、数字を使ってファクトベースで論陣を張っていました。時の政権におもねらずにファクト主義で主張をしていく、というのは実は伝統なのです。
フランクリン:それは知りませんでした。今もその哲学が生きてるということだと思うので、そのルーツは財産だと思います。
というのも、創刊時のルーツというものは、メディアにとって非常に重要です。その基礎となる信念が、常にガイダンスとなるということは非常に重要だと思っています。『エコノミスト』も1843年の創刊以来、174年にわたってルーツを常に標榜してきました。そもそも保護主義に反対することを目指して、この雑誌は始まっているのです。穀物価格の高値を維持して地主を保護してきた「穀物法(コーン・ロウ)」の廃止を訴えることを目的にジェームズ・ウィルソンが創刊をしました。それ以来、保護貿易の動きには強く反発し、自由貿易というのを推進してきた歴史があります。
今も保護主義の動きが強まっているので、われわれは反対を唱えなければならない。その意味では、174年経っても『エコノミスト』の役割はまったく変わっていません。
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