米名門経済紙WSJ、ついにネットが紙を超える 親会社ダウ・ジョーンズCEOが語った生存戦略

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「来年にはデジタル購読者が紙の購読者を超えることになる」と語るルイスCEO(撮影:梅谷秀司)
全世界で200万人を超える購読者を抱え、米国最大の発行部数を誇るのが、米経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』だ。紙の新聞を読む人が減る中で抱く危機感は他社同様に大きい。
最近では、自社開発によるニュースアプリやSNS(交流サイト)での配信など、矢継ぎ早にデジタルの世界で生き残るための施策を展開。同時に、限定サービスを提供する会員制クラブを開設するなど、リアルの世界への布石も忘れない。
WSJを発行する米メディア企業ダウ・ジョーンズを率いる、ウィリアム・ルイスCEO(最高経営責任者)は、デジタル化を進めるべく社内で発破をかけ続ける。メディアの生き残る道、そして待ち受ける将来について、来日したルイスCEOに聞いた。

もっともっとモバイルに執着せよ

――WSJのデジタル化を進めるための施策を矢継ぎ早に打っている。しかもハイスピードで。背景にはどんな考えがあるのか。

モバイル、モバイル、モバイル。日々私が唱えている呪文のようなものだ。紙の新聞での成功を、モバイルの世界にも持ち込まなければならない。その場合、原則は「モバイルファースト」。紙に載せることよりも先に、モバイル環境のことを考える必要がある。スキルが大きく異なるからだ。(スマートフォンなどで表示する場合は)グラフィックを画面に合わせ、動画も載せ、時には記事が短くなければならない。ニュースを読みやすくするアプリも作った。

記事ページの表示速度も非常に重要。これについては一度、怒ったことがある。調べさせると、何年もの間、ページの中に「ゴミ」が投げ込まれていたことがわかった。広告の担当者が必要だと主張したデータのたぐいだった。だが、われわれがその一切を削除すると、一気に速くなった。

――かなり現場の細かな部分まで気を配っているのか。

私の仕事は(編集長という意味の「エディター・イン・チーフ」をもじって)「アジテーター・イン・チーフ」、つまりモバイルに移行しろと扇動すること。オフィスを歩きながら、「何をしている?なぜモバイルを見ていないんだ?」と、社員を刺激する。モバイルの収益でわれわれは生きているというのに、社内ではまだデスクトップPCを使い、紙に手書きもしている。「もっとモバイルに執着しなきゃ!」。これが私なりのキャンペーンだ。

とにかく速く行動すること。紙の場合は、新たなセクションを設けるなどちょっとした刷新、あるいは新たな雑誌の創刊でさえも、ゆっくりしたものだ。毎週のようにどこかしらを改善しなければならないモバイルの世界に比べれば。組織をフラットにして意思決定を速くする。これが重要だと学んだ。

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