米名門経済紙WSJ、ついにネットが紙を超える 親会社ダウ・ジョーンズCEOが語った生存戦略
――ダウ・ジョーンズ全体を見ると、今年1~3月にデジタルでの収入が初めて50%を超えた。
それに加えて重要なのが、WSJのデジタルのみの購読者がおよそ45%になっていることだ。われわれの成長の原動力がここにあるからこそ、モバイルユーザーを呼びこもうと懸命に取り組んでいる。来年は記念すべき年になるだろう。デジタル購読者数が紙の購読者数を超えることになるからだ。
一方で、「紙メディアは死んだ」といった報道は大きく誇張されたものだと、わかってきている。われわれの購読者のうち140万人は、世界中で毎日紙の新聞をいまだに買っている。そしてiPadや携帯電話でも読むという人もいる。週に3日は紙で、2日はiPadで、仕事中はデスクトップで、そして電車に乗っているときは携帯で、といった読み方があるのだ。
要は情報の配達手段の問題。昔はもっと簡単だった。みんな、毎日、紙の新聞を買うだけだったのだから。だがここ数年に起こったのは、コンテンツへのアクセス方法に関して、読者の好みがうるさくなったということ。問題はわれわれにある。こうした複数のプラットフォームに合わせて、配信方法を設計し直さなければならない。それは「デジタルを大事にしろ」というよりは、「顧客につきまとえ」ということなのかもしれない。
新聞社のビジネスモデルは変わった
――最近ではニュースの購読だけでなく、会員制サービスも始めているが、その狙いは。
まさに顧客の求めるものを用意しようとしたからだ。2014年には、WSJの読者が限定イベントやパートナー企業からの割引などを受けられる「WSJ+(プラス)」を、昨年には、それよりもプレミアムなサービスとして「WSJプロ」を始めた。
WSJプロは「中央銀行」や「プライベート・エクイティ」、「ベンチャーキャピタル」といった、特定のトピックごとにサービスを設けて、コンテンツを提供したり、イベントを開催したりするものだ。トピックは今後より細分化していくと思う。こうしたサービスを、たとえ2000人しか求めていないとしても、1人が年間2000ドルを支払ってくれるのであれば、ビジネスとして成り立つ。
そして、会員制サービスのトップに来るのが、企業のCEOやCFO(最高財務責任者)を集めた、完全招待制のクラブだ。ここに来れば、他社のCEOやCFOと交流できる、というもの。東京でも来年の4月に初めてのイベントを開催する。