ワシントン・ポストがNYタイムズに勝った! そのデジタル戦略を分析してみると?
「ワシントン・ポスト」は2015年10月、デジタル版のユニークビジター数で「ニューヨーク・タイムズ」を初めて追い抜いた。「ニューヨーク・タイムズ」は国際的な知名度の高いグローバル媒体であった一方、「ワシントン・ポスト」はワシントンDC近辺の地方紙としての色彩が強かったため、今回のテイクオーバーは驚きをもって捉えられている。
2013年からAmazonのジェフ・ベゾスCEOが保有する「ワシントン・ポスト」。ソーシャルやアプリなどにおける多様な配信戦略、ページ読み込み時間の短縮、ニュース・サイクルの高速化など、成功要因は多々ある。しかも、10月はオレゴン州の大学での銃乱射事件、大統領選レースなど注目ニュースが多く、追い風になった。
また、購読料のディスカウントを実施。同紙は有料購読者数が増加したと主張しているが、実数は公表していない。他方、「ニューヨーク・タイムズ」の「ワシントン・ポスト」のはるか上を行く講読料は、今後の同紙の成長を妨げる要因になるだろう。
どうして追い抜けたのか。「ワシントン・ポスト」が上げた成果をカテゴリーごとに検証してみた。
「ワシントン・ポスト」のオーディエンス拡大の主要因が、ソーシャルなのは明白だ。読者が自らサイトにやってくるとは想定せず、「読者のいる場所」へ訴えかける強力なソーシャル配信戦略をとる。
Facebookの「Instant Articles(インスタントアーティクル)」からAppleのニュースアプリ「News」まで、広範囲にアグレッシブなコンテンツ配信を行っているのが、数字として現れている。トラフィック解析サービス「SimilarWeb」によると、5〜10月では、ソーシャルからの参照トラフィックのうち、Facebookが、43〜50%を占めた。5〜6月で同トラフィックは19.3%急伸し、1150万人に達した。9月から10月にかけても7.4%伸びていた。