米名門経済紙WSJ、ついにネットが紙を超える 親会社ダウ・ジョーンズCEOが語った生存戦略
――新聞社としてのビジネスモデルが大きく変わってきている。
かつての新聞社はこうだった。「これがわれわれの世界観だ。買いたきゃ買えばいい。フィードバックもいらない」。しかし顧客中心的な考え方が重要になった今では、「一緒にここに座って。こんな事業を始めようと思っているんだけど、どう思う?」と尋ね、何時間も一緒に話すのだ。
われわれは大きな文化の転換を図った。今の考え方はこう。「われわれなりの世界観はいまだに持っている。が、何より顧客がわれわれのやっていることに対して、快く思ってもらう必要がある」。これは非常に大きな変革だ。
すべての記事を無料にすることはしないが、いくつか試しに読んでもらえるような取り組みをしている。たとえば「スナップチャット」。WSJがスナップチャットで流れるなんて誰が考えただろうか。これはティーンエージャーや若者たちにWSJを読んでもらいたいから。1日に6つのニュースを流している。読者からは「スナップチャットで記事を読んだ子どもと、初めてマイナス金利について話をした」という感謝のメールをもらった。
フェイスブック(FB)は購読者を増やすのに非常に有効だ。記事がシェアされればユーザーの会話に入り込んでいく。そして着実に購読へとつながっている。フェイスブック・メッセンジャーでのニュース配信も始めた。
今後、どのような結果を生むのかはまだわからないが、これまで考えもしなかった、新しい顧客層に届かせてくれているのは確かだ。そして長期の購読者になってもらえる自信はある。世界中で今、ニュースは易しく、単純化されたものになっており、痛烈なニュースや明晰な調査報道を届けられるメディアは少なくなっている。われわれはそれができている。
日経によるFT買収には驚いた
――今、メディアを取り巻く環境は、大きく変わっている。自社の変革だけでなく、日本経済新聞の英フィナンシャル・タイムズ買収のようなM&Aのケースもある。こうした動きをどう見ているか。
「ワオ!何だって!」。ニュースが飛び込んできたときは、そんな気持ちだった。さらに買収金額の情報が入ってきて「オー・マイ・ゴッド」。8年半もの間FTで働いていた私にとっては驚きだった。これまでも常に売りに出される噂はあったが。
親会社だった英ピアソンの主事業は教育で、FTとは合わない。売却は十分理解できるもの。日経による買収は私には納得のいくものだった。多くの日本企業が事業のグローバル化を図る中、国際報道の需要は高まる。さらに、あなた方は気づいていないだろうが、財政や経済、社会の変化、テクノロジーなど、世界は日本のことを注目している。買収金額もいい価格だったと思う。
――いい価格? なぜそう思うのか。
コンテンツがいつの時代も王様だからだ。それはウェブでも同じ。ただ、多くの競合企業はわからず、内容が陳腐化している。スケートボードに乗る猫に騒いだり、ドナルド・トランプ氏の髪の毛に執着したり。それよりも、トランプ氏が大統領になるということが何を意味するか、こうしたことが重要だ。世界で通用するジャーナリズムの供給は干上がっている。それを考えれば、日経のディールはすばらしかった。多くの利益を生む、国際戦略を加速させるだろう。そしてわれわれも闘争本能を呼び覚まして、前に進まなければならない。
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